とことん掘り下げられた2022年ローカルベンチャースクールの記憶。~ふたりの職人が感じた厳しさとその先で見えた覚悟と決意~
2023年10月15日
ローカルベンチャースクール(以下LVS)を通過し、2022年4月、起業型地域おこし協力隊として着任した中島洋一(なかじま よういち)さん。同じくLVSを経て2023年4月に着任したばかりの山下裕由(やました ひろゆき)さん。ふたりの共通点は手に職を持つ「職人」。LVSの経験は現在の活動や今後の人生にどのように影響しているのでしょうか。偶然にも同じ拠点で起業を目指すお二人に、これまでのことやこれからのことについて話を伺いました。
起業型地域おこし協力隊 中島洋一さん(令和4年4月着任) – あつまのおと (atsuma-note.jp)
起業型地域おこし協力隊山下裕由さん(令和5年4月着任) – あつまのおと (atsuma-note.jp)
厚真町は今年もローカルベンチャースクール2024を開催します。エントリーをご希望の方はこちらをクリックしてください。
年齢も経験も異なる2人が目指す夢
――厚真町ではどのような活動をしていますか?
中島:厚真町に移住して2年目です。現在は木工作家として、木彫りのインテリアやバッグなどを作っています。作品はクラフトフェアや展示会に出展したり、SNSに載せたりしています。 山下:今年4月に厚真町に移住してきました。6月に工房を構え、くん製事業を始めました。カシューナッツやタコのくん製品を作って町内外のお祭りやイベントなどで販売しています。そこで顔と名前を覚えてもらえたらと思っています。
――厚真町へ移住する前の経験について教えてください
中島:高校を卒業してから自動車ディーラーに就職して自動車の修理などを担当し、エンジンの分解と組み立てを経験しました。車の修理って大体が部品の交換なので、なんかすごくつまらないなぁと感じていました。何かを作り上げることをやってみたいなと考えたときに、もともと木を触ることが好きだったので、木のことを勉強して独立したいとの夢を持ちました。その後、家具関係の仕事に就いて、椅子の座面を張る作業をやっていました。この時にミシンの踏み方を覚えるために、布を使ってカバンを作る練習をしていました。 ものづくりについてもっと勉強したい思いが強くなり、37歳のときに北見市の高等技術専門学院に入学してデザインとノミの使い方、カンナのかけ方をはじめとする木の加工に関する基礎知識と技術を習得しました。
山下:僕が中学生の頃に起きたアメリカの同時多発テロをきっかけに国際協力関連の仕事やジャーナリストに興味を持ちました。ジャパンハートというNGOに入職し、カンボジアの現地スタッフとして6年間働きました。カンボジアでは小児がんの子どもたちを受け入れる病院を開院し、立ち上げから携わり、最終的にゼネラルマネージャーとして働いていました。物資の輸送など医療に直接関わらないほぼすべてのことが担当でした。
――そこから山下さんはなぜ、くん製事業を始めようと思ったのですか?
山下:昨年(2022年)の9月にカンボジアから日本へ帰国しましたが、もともと国際協力のことしか考えていなかったので、何をするかは全く決まっていませんでした。NGOで働いていたころ、医療従事者の方々が懸命に命を救おうとしている姿がすごくかっこよく、尊敬できる存在に思えました。自分も何か専門的な技術を身につけてこれが自分の仕事ですと自信を持って言えるようになりたいなと考えました。それとなんとなく古臭いものが「かっこいいな!」と思っていました。そして北海道内を旅行中に食べたくん製がとてもおいしくて、その魅力にはまり、調べていくうちに製造方法や素材のことなどに興味が湧いてきました。この技術を学びたい、身につけたいと思い、学べるところを探したところ、紋別市にある約100年の歴史をもつ老舗の工房が受け入れてくれて、1ヶ月間、技術習得の修行をさせてもらいました。
――中島さんは作った作品をクラフトフェアに出展されたんですよね。
北海道で成功している木工作家さんはだいたい本州のクラフトフェアに出展して、そこから知名度を上げています。今回、私は日本国内でナンバーワンのフェアである長野県松本市のクラフトフェアの選考に通過して出展することが叶いました。そこで、都内で店舗を構えるオーナーさんに声をかけて頂き、縁が出来て、作品のアドバイスをいただきました。
――具体的にはどのようなアドバイスだったのですか?
例えば、クマの木彫りは「単体じゃつまらないから、何でもいいから頭に乗せたほうがいいですよ」とのことでした。頭にシマエナガやりんごを乗せたりしてちょっと変えてみました。やってみたところ、本当に売れてとても嬉しかったです。やっぱり結果を出している人の言葉は違いますね。木工の仕事って儲からなくて効率が悪いし、大変なんですよ。何年もやっているのに未だにこんなことをやっているのか?って、本当に情けなくなっちゃいます。もう少し違う仕事をすればよかったかな?と思うこともあります。でも、やっぱり木を触っているのが好きなので、これが運命というか、受け入れてやるだけですね。
――2人は同じ場所で活動していますがどのように見つけたのでしょうか。
中島:昨年(2022年4月)着任してから1年間、工房として製作作業ができる場所を探していました。LVSでも作品作りに集中できる拠点を見つけるように言われてきました。今年になって厚真町役場の担当者に、今の工房を紹介していただくことができました。本当はもっと山奥の木に囲まれた森の中のアトリエが理想なんですが、なかなか見つからないのでまずはここに決めました。
山下:場所を探すことは本当に大変です。くん製事業は煙が出るので周囲の住人の方へ迷惑とならないように注意が必要です。製品を作れる場所を探すため、役場に相談しました。中島さんが場所を探しに行くから一緒に来たら?と声をかけていただきました。それがきっかけで現在の場所にコンテナを置かせていただくことになりました。希望通りの形ではありませんでしたが、製品を作らないことには自分のスキルも上がらないので、まずはしっかり製品を作ろうとこの場所に決めました。
――2人で事業の事について話したりはするのですか?
中島:ひとりで作業しているのが自分の性格にはあっていると思っているので普段はあまり誰とも話さないです。
山下:結構、僕ら仲いいですよね。会うと30分くらい必ず話しますよね。
中島:そうだね、ま、山下くんだけが僕の話し相手だから。(笑)
とにかく厳しかったLVS。そこで得たもの
ローカルベンチャースクール(LVS)の詳細はこちら⇒https://atsuma-note.jp/lvs/
――お二人はLVSに参加していますね。印象を教えてください。
山下:くん製事業をやることは決めていましたが、どこでやるかまでは決めていませんでした。インターネットでたまたまLVS参加募集イベントを見つけて、面白そうだったので参加してみました。協力隊制度を活用することで事業立ち上げ当初の不安定な時期にお金をいただきながらやりたいことに挑戦できるのはすごく良いと思い、LVS参加を決めました。でも、くん製事業をやる!と決めてからまだ日も浅かったですし、技術を学んで、とにかく職人になりたい気持ちしかなく、動機も計画も薄いし不安もありました。LVSでは「なんでその事業をやりたいの?」から始まり、とことん掘り下げられました。
積丹でジンを作っている工場があるのですが、そこの残渣を無駄にしないようにホタテの付け液に使う案を発表したのですが、あるメンターには「本当にそれやってみたの?売れると思う?もし売れると思っていない商品を言っているなら、それは嘘つきだよ」と言われたりもしました。厳しかったですね。でも、その結果として、くん製事業をおじいちゃんになるまでやっていこう!と決意を固めることができ、すごく有意義な時間でした。
中島:一生忘れられない場ですね。きつかったですね。嘘や建前は全部バレるので。自分の考えの甘さや心の奥底までさらけ出される、そんな感覚がありました。他の参加者のみなさんがきれいで分かりやすいプレゼンテーションをしているのに対して僕は全然うまくできないし、わけのわからないことを言っているような気がしていました。LVSを受ける前は「俺が通らないで誰が通るんだ!」くらい余裕でしたけど、そんな鼻がぽっきり折られたという感じです。まずは作品をつくる場所探しや、販売に力を入れた方が良いと、結構強く言われました。自分としては、それよりもクラフトフェアに出展して作品を通して評価してもらい、自分の価値を上げていく戦略を説明したのですが、あまり伝えきれませんでしたね。
――でも、本当に出展し、新しく売れる商品もできましたもんね。
そうですね。松本市のクラフトフェアの選考に通過して作品を出せたことは凄いことなんですよ。LVSのメンターはとにかく厳しいんです。まぁ、これも自分に対する期待だと受けとめて、しっかり見返せるようになったらいいんじゃないかと思っています。
――今後の目標も教えてください。
山下:目指す工房のコンセプトは「山と海と川をつなぐくん製工房」です。山から出た木をつかって、海や川から獲れた魚や貝をくん製品にする。そこに人が集まって、コミュニティができていく。カンボジアとつながる企画もしていきたくて、旅行業関連の資格を取得しました。お世話になったカンボジアの人たちと北海道を巡るツアーを考えています。
僕はとりあえず動いてないとダメな性格なんです。今回まずはコンテナを買って始めましたが、今後はチップを自分で作りたいし、食材や木材を乾燥させる場所も欲しい。煙のことを気にせずに製品づくりもしたい。そんな場所に移れるようにしたいです。
中島:協力隊が終わった後のことはまだ見えないですね。今は良いものを作ってみんなに見てもらい、販売につなげていきます。すでに来年(2024年)2月の企画展も決まっているのでそこに向かって、新しい作品のイメージをデッサンしています。任期中に自分のスタイルというか基盤づくりをしたいです。これからも良い作品を作れるようにこれからも頑張ります。
――ありがとうございました。これからも応援しています。
中島洋一さんのInstagram
https://www.instagram.com/melodisk.fab/
山下裕由さんのFacebook
https://www.instagram.com/smoke_thmey/
北海道厚真町には地域おこし協力隊制度を活用してやりたいことをカタチにすることを目指している人がいます。思い立ったらすぐに行動する人、周囲からどれほど急かされても自分の信念を曲げずにペースを崩さず、自分のペースを大事に進む人。
自分のやりたい事、成し遂げたい事に向かって進む姿は同じでもその歩幅やスピードは異なります。どう進めていくか?そしてどんな結果が出るか、それらはすべて自分自身の選択次第です。目指す未来に向けて選択し続ける覚悟が必要です。LVSはそれを得るための場です。厚真町では夢を叶えるために起業する人を募集しています。この記事を読んで何かをやってみたくなったらまずはご相談ください。厚真町でお待ちしています。
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