挑戦者が走り出した“芽吹き期”だからこそ、北海道・厚真町へ。 「厚真町ローカルベンチャースクール2019」!

2019年9月6日

北海道・厚真町で2016年から毎年開催されている「厚真町ローカルベンチャースクール」。

4期目となる2019年度も、開催されます。

「厚真町ローカルベンチャースクール」によって、まちはどう変化しているのでしょう。そして、今年度にかける思いとは?

担当者である、厚真町役場・産業経済課の宮久史さんにお聞きしました。

まちの未来を自分たちでつくるために

– はじめに「厚真町ローカルベンチャースクール」とは何なのか、教えてください。

宮:移住・起業したい人を厚真町がサポートし、事業プランのブラッシュアップと選考会を行うプログラムです。書類選考・一次選考を経て、事業プランのブラッシュアップを行い、最終選考会を通過後、正式に採択されると厚真町のサポートのもと厚真町に移住し、起業または新規就農、新規事業創出などの活動ができます。

都市部からの移住が伴う場合は、地域おこし協力隊制度の活用が可能です。「地域おこし企業人」の場合は、今の勤め先の企業に属したまま新規事業を開拓できます

厚真町は今年もローカルベンチャースクール2024を開催します。エントリーをご希望の方はこちらをクリックしてください

なぜ「厚真町ローカルベンチャースクール」をやっているかというと、未来をあきらめたくないということ、そして「ほしい未来はつくればいい」と思っているからです。でも、こちらから「これをしてください」とお願いするのではなく、その人がやりたいことのチャレンジをまちが応援するスタイルになっています。「厚真町ローカルベンチャースクール」をはじめ、僕らができることはやりきってまちの持続可能性を少しでも高め、次世代に渡していきたいなと思っています。

【厚真町公式キャラクター あつまるくん】

“チャンスを生む芽”がどんどん出ている

— これまでの3年間で合計8名が採択され、厚真町で動き出していますね。どのような変化や雰囲気が生まれているのですか。

宮:地域って、いろいろな色、大きさの事業が入り込んで豊かになっていくと思うんです。今、いろいろなチャレンジが始まっています。

例えば、車がなくても町内を車で移動するモビリティサービスの実験の準備が始まったり、馬搬(ばはん)という馬を使った伝統的な林業を始めた方がブドウ園を耕したり、神戸と厚真町を往復している「地域おこし企業人」の方が厚真町で新しい会社をつくったり……。

また、何かを生み出しやすい雰囲気がでて、何かを生みたいと思う人たちも増えてきています。

— 馬搬の活動をしている西埜将世(にしのまさとし)さんは地域おこし協力隊で、今3年目とお聞きしました。地域おこし協力隊は3年の制度ですから、今年で終わりですよね。

【西埜さんと馬の姿を、まちの子どもたちが見つめます。将来は騎馬隊?】

– “チャンスを生む芽”。ビジネスの可能性や、まちの可能性をも広げていく“芽”ですね。

宮:はい。木で例えると稚樹というか、芽生えたばかりの樹です。そういう雰囲気が少しずつ出てきていると感じています。走り出したばかりで、これから新たに積み上げていく段階ですが、複数のチャレンジが同時多発的に起きているなかで何かとつながり、自分のやりたいことがさらに加速したり、相乗効果を生んだりすることはあると思うんですよね。

こういう雰囲気を楽しめる人、力に変えてくれるような人、すでに走り出しているメンバーや私たちと「やろう」と思ってくださる人が、「厚真町ローカルベンチャースクール」に参加してくれたらいいなと思いますね。

【「厚真町ローカルベンチャースクール2017」の様子】

震災から一年。今の厚真町の環境とは?

– 厚真町では2018年9月6日に北海道胆振東部地震が起きました。あの日から約一年となる今、まちの環境はいかがですか。

宮:まちの状況は、正直にきちんとお伝えする責任があると思います。復旧・修復工事中の道路や山が多いので、町内にはダンプカーやトラックがたくさん走っています。そういう工事などの影響で、まちが埃っぽい日もあります。

崩落した山の斜面は落石や地滑りなどを抑止する対策をしたり、川の上流域では土砂災害防止のため砂防堰堤(さぼうえんてい)という小さなダムを造ったりしていて、今までの厚真町に比べると自然環境に人造的なものが増えています。震災を経てまちがそうやって手当てをされて改めて産業が営まれ、そのうえで人々が暮らしていくことに関心のある人に、厚真町は向いている気がしますね。

興味深い話もあります。地震で崩落した山々は、基岩(地盤の岩石のこと)が露になっているのですが、専門家によるとそれはなんと9000年〜1万年前の地形だそうです。厚真町の西側にある樽前山が約9000年前に噴火して火山灰が厚く積もっていて、それが今回の崩落原因の一つになっています。そういう意味では、約9000年前に火山灰が厚く積もったときから今回のような崩落が起こる可能性があったということだと思います。

震災は悲劇でしたが、そういう意味では「約9000年前の地形が見えている」とも言えるんです。自然は、超長期の営みのなかで動いているんですよね。遥かな時間を垣間見ることができる場所にもなっていると思います。

– 町民の皆さんの暮らしのほうはいかがでしょうか。

宮:地震の被害では、住宅224棟の全壊、318棟の半壊がありました。厚真町の全2147世帯のうち、仮設住宅や応急仮設住宅、みなし仮設住宅、公営住宅やトレーラーハウスに入居しているのは165世帯(2019年8月29日現在)です。

【震災で大きな被害を受けた、厚真町の特産品であるハスカップの畑。被災を乗り越え、今年も収穫体験などができる「ハスカップフェア」が開催されました】

– 震災後、一度は中止を発表した「厚真町ローカルベンチャースクール2018」を、“再起動”されましたね。そこにはどのような思いがあったのですか。

宮:「まずは人命救助や復旧作業があり、皆さんの生活を少しでも早く安定させることに意識を集中させたい」という考えから、一度は中止にしようと決断しました(詳細はこちら)。

その後、町外の人々の力を取り込んで持続可能なまちに育てていく重要性を強く感じたんです。東日本大震災を経験した自治体から「今までの地域課題の解決なくしては、復興はありえない」「復旧が終わってから復興を考えるのではなく、両立してもいい」といった言葉をいただいて、開催を決断しました。「この1、2年のふるまいによって、10年後、20年後の未来が劇的に変わる可能性がある」

【震災の後に開催された「厚真町ローカルベンチャースクール2018」】

「自立・挑戦・寛容」の文化を醸成していきたい

– 今期も、震災の影響はありますか?

宮:お伝えしなければいけないのは、震災の影響で役場職員の仕事は震災前より増え、多岐にわたっています。以前と比べれば、「厚真町ローカルベンチャースクール」の参加者の一人ひとりにかけられる時間は減ってしまっています。もちろんきちんと話をして、必要なときにサポートできるよう動きますが、こちらが主体的にどんどんサポートできる状態ではないので、その点はご理解いただきたいと思っています。

– 起業面でまちに良い雰囲気が生まれているというお話でしたから、自ら開拓していける人にはとてもいいですね。今の厚真町に来ると、いろいろなことが学べると感じました。

宮:ありがとうございます。今の厚真町では、震災が起こったところからどう未来を描くかという能力が必要な気がします。災害の多い日本には何か震災を契機にする力があるような気がするんです。

— 10年後などのビジョンはありますか。

宮:大きいビジョンはなくて、一つずつ変えてくしかないと思っています。今僕がテーマにしているのは「自立・挑戦・寛容」なんです。自立していきたい、そのための手段として挑戦をしていきたい。そして挑戦を生み続けるためには、成功も失敗も含めて寛容する雰囲気が必要だろうと。そういう文化を醸成していきたいです。

まちやコミュニティは、生き物に似ている部分があると考えています。生き物の死というのは、「何かを取り込む・吐き出す」を含めた循環が止まるということです。まちにとっての循環の源は、人だと思うんです。人の循環を10年後には今よりもつくっていきたいですね。

今、まちにおもしろいすてきな人たちが増えてきて、循環が生まれ始めているように感じます。こういう人たちがもっと増えた10年後はどうなるんだろうって、楽しみだなと思います。

人は、いつからだって走り出せるんですよね。走り出そうと思ったときが走りどきだと思います。10年後の厚真町を一緒に見ませんか? ピンときた方のエントリーをお待ちしています。

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