自分軸の発見から始まる、それぞれのリセット・リスタート。 「厚真町LLL2017最終選考会」
2018年3月23日
「厚真町ローカルライフラボ(LLL)」の最終選考会が2017年11月25日に行われました。LLL 北のナリワイ研究所は、地域で暮らし方や働き方を探求し、自分なりの「ナリワイ」を生み出すプロジェクトです。厚真町や移住に興味を持つ人が、起業を含め自由なテーマで可能性を探究し、自らが進んでいく方向を見出すことを目的にしています。採用された研究者は、最大3年間厚真町に暮らしながら、自らの「ありたい暮らし」を築くことを目指します。
最終選考会の当日は、一次選考を通過した8名のうち7名が再び厚真町に集結。最終プレゼンテーションを行い、審査の結果3名がLLLの第1期研究生に採択されました。3名のストーリーを軸に「LLL2017最終選考会」を振り返ります。
厚真町は今年もローカルベンチャースクール2024を開催します。エントリーはこちら
参考:動き出す「北のナリワイ研究所」。研究対象は自分自身。 「LLL2017 一次選考合宿」
「迷っても、戻る場所ができたから心強い」–村上紗希さん
一人目の採択者は村上紗希さん。厚真町と札幌市の中間に位置する恵庭市に住み、現在はタウン誌の広告営業をしています。
村上さんが最終プレゼンで発表した研究テーマは「厚真町の魅力を内側から伝える地域ライターになる」。厚真町に住み、町内で行われるイベントやさまざまなコミュニティに参加して、「内側」から地域の魅力を発信するライター業を主軸にしたい。いずれは、イベントの企画立案に関わったり、町内の産物を活用したご当地カレーの開発も手がけたいと展望を語りました。
実は村上さん、一次選考会では「地域課題解決のための求人サイトを作る」という異なる事業プランを掲げていたのですが、一次選考会3日目に白紙に戻していました。
「チーフメンター勝屋久さんの講演の中で『思考がワクワク(欲求)を阻害する、やらないことを正当化する』と聞いてハッとしました。仕事や時間を言い訳に気持ちを打ち消していたけれど、本当にやりたいことは何か?に立ち返ると、『文章を書きたい。人に楽しんでもらいたい。まちづくりがしたい』という自分の“核”を確認できました。求人サイトは手段に囚われていて、自分と向き合ってきたつもりでも、何かをぶち壊すところまではできていませんでした。一次選考会のあと、ファシリテーターの但馬さん(エーゼロ株式会社厚真町オフィス所長)とのオンラインセッションを通じて完全にリセットできました。自分の中の『好き』という気持ちを改めて見つめ直したとき、地域ライターになりたいという思いが固まったんです」。
どこかでつまずき方向性に迷いが生じても、「これが好き」という核があれば、人は何度でも立ち戻ることができる。その確信が村上さんに自信を与えました。最終選考会のプレゼンテーションを見た但馬さんは「一次選考会とは見違えるほど成長した」といいます。「LLLは研究テーマに対して能動的に動くことが大切です。待っていたらあっという間に一年は過ぎてしまいます。自ら学ぶ姿勢を忘れずに、ライターという職業の枠にとらわれずどんどん可能性を広げていってくれると期待をしています」(但馬さん)。
春までに何度も厚真に足を運び、町の人たちとのつながりを築いていきたいと話す村上さん。「4月にはゼロからのスタートではなく、厚真の地域を少しでも自分になりに掴んだ上で、暮らし始めたい」と意気込みを語ります。
「これまでの自分を編集し、生き方を新たにデザインする」–田中克幸さん
二人目は、現在は東京で企画・販促プランニングの仕事をしている田中克幸さん。最終選考会では研究テーマとして「厚真の地からご当地デザインを発信する」グラスツール(草の根)デザインを掲げました。田中さんは、「デザインは何かをキレイに見せる手段ではなく、問題を解決するために知恵を使うことだと考えています。デザインの力で厚真町の地域課題を解決したいというのが僕のナリワイのテーマです」と話します。
田中さんが考えるデザインは多岐に渡り、ハスカップのご当地スイーツの商品化や、町中の音を集めた厚真BGM、ドローンで厚真町を見下ろす映像制作など。「厚真をワクワクさせて、人が動く仕組みを作り関係人口を増やしたい」と語ります。
田中さんも、エントリーした時点では別のプランでしたが、一次選考会を経て変化し、よりデザインに特化したプランに洗練しました。
「美大時代にデザインの視点から町を興す活動に参加していて、地域に入り込む活動を掘り下げたいと思いながら実現できていませんでした。ワークを通じてこれまで生きてきた中で感じたこと、経験したことを“編集”できてきて、ようやく自分の芯が見えてきました」。
最終選考会までの1カ月余りの間に、田中さんは多忙な仕事の合間を縫ってフィールドワークに出ます。「高知県や京都府、千葉県等に行き、デザインの視点で地域おこしに取り組んでいる方達に会ってきました。現場を見て心で感じ、刺激を受けながら、厚真だったら何ができるだろうかと考え続けました」。そのプロセスから生まれたのが「グラスツール(草の根)デザイン」というテーマでした。
審査では、「ご当地デザインは、他と何が違うのか?」「大学時代からのデザインのブランクは大丈夫か?」と懸念する声も。勝屋さんからは「可能性は感じる。でもこの世界は競合が多いから本気でやらないと難しい。まずは1年間死ぬ気でやって、少なくとも2つのプロジェクトを提案し、しっかりと形にしてほしい」と、期待を込めた“注文”がなされました。
「素晴らしいチャンスを与えてくださったことに本当に感謝しています。厚真町役場のみなさんは親身になって本気で受け入れ体制を築いてくださっています。メンターのみなさんは豊富な経験から忌憚のないご意見とアドバイスを惜しみなく与えてくださいます。挑戦するフィールドとしてこれ以上の環境はありません。言い訳はできない。結果を残せるかどうかは自分次第。覚悟が決まったというのが大きいですね」。
「安心して、わたしを全部出せる場所」–福本深里さん
札幌市から来た福本深里さんは、薬膳の知識や美容師のスキルを生かし、「自宅兼コミュニティカフェ&サロン」の開業を研究テーマとして掲げました。観光客と町内の30代〜70代の女性をメインターゲットに、健康や癒やしにつながる場を提供したいと、マインドマップを用いて、中心に描いた一軒家から放射状に広がる夢を紙いっぱいに表現しました。「(マインドマップが)僕には太陽に見えた」とチーフメンターの勝屋さん。「福本さん自身が太陽のような存在だからなんだと思う。もっと自分を愛し、もっと輝いて、毎日の中で疲れちゃった人、傷ついた人たちの役に立つようなカフェを作ってほしい」と大きな期待を寄せました。
また、2回の選考会をファシリテーターとして見つめてきた但馬さんは「一緒に参加した仲間を大切にして、選考会の間も終始ほかの方をケアしていた姿」を評価。「人を巻き込み、まとめる力がある」と福本さんの印象を語ります。
「私自身はみんなをまとめようと意識したことはありません。でもそういった評価をいただき、自分にはそんな一面があるんだと気づかせてもらいました」と福本さんはいいます。
選考会を振り返ると「とにかく安心できる場だった」と福本さん。「普段の生活の中では、自分がどうしたいかに向き合える時間はありません。それが積もって自分自身を出し切ることができずに息苦しさを感じてきたけれど、参加して、厚真町役場やメンターの方の柔らかさや、参加者の空気感が良かったので自分自身を全面に出すことができたんだと思います。私はこの夢を絶対に実現したい。そしてママが楽しく仕事をしている姿を息子に見てもらいたいんです」。
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