住宅・子育て・仕事の相談、なんでも聞きます。移住希望者に寄り添い、二人三脚で移住をサポート

2017年8月24日

新千歳空港から車で30分、200万都市・札幌からは1時間半の距離にある厚真町には今、「せわしない都会から離れて田舎暮らしがしたい」と考えるシニア世代や「自然豊かな場所で子育てをしたい」と望む子育て世代、自分らしい仕事をつくっていきたい起業家などから移住相談が相次いでいます。そんな移住を望む方々のワンストップ窓口を担当するのが、厚真町役場まちづくり推進課です。ご自身も移住者でありながら、住宅、子育て、仕事など、移住にまつわるさまざまな相談に対応している小山敏史さんにお話を聞きました。

移住の三大不安は「住宅」「子育て」「仕事」

– 厚真町における移住・定住の相談体制について教えてください。

小山:厚真町では2006年に移住ワンストップ窓口を開設しました。その窓口業務を現在、まちづくり推進課総合戦略グループが担っています。全国の移住相談会に参加したり、移住を考える方へアドバイスをしたり、移住された方が住宅を建てるときの助成金の相談に乗ったり。移住・定住に関するあらゆるお問合せに対して、ワンストップで対応しています。

– 移住を希望される方からはどんなお問合せがありますか?

小山:主な問い合わせとしては住宅・子育て・仕事にまつわるものが多いですね。相談者の立場・状況・要望を総合的に考え合わせた上で、それぞれの方にふさわしい情報を提供しています。

– 厚真町の住環境について教えてください。

小山:厚真町に住むには「分譲地などの土地を購入して家を建てる」「町営住宅などを借りる」「空き家バンクを利用する」といった手段があります。

まず「分譲地」は、厚真町にはフォーラムビレッジやルーラルビレッジ、かみあつまきらりタウンなど、タイプの異なる分譲地があります。

例えばフォーラムビレッジは、田舎暮らしをとことん楽しみたい方におすすめです。天然の森に抱かれたロケーションの中に1区画200坪以上という開放的な宅地が広がり、家庭菜園やガーデニングも楽しめます。その隣にあるルーラルビレッジは、より自然の樹木や地形をいかし、森の中に住んでいるようなエリアです。

かみあつまきらりタウンは、子育て世代向きです。ショッピングセンターや大きな病院のある苫小牧市沼ノ端地区までは車で15分ぐらい、日高自動車道の厚真ICもすぐそば。2016年には新しく認定こども園が誕生し、子育て環境も充実しています。

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次に「借りる」ですが、厚真町では町営住宅や子育て支援住宅を整備し、希望する方に賃貸で提供しています。町営住宅には単身者向けの間取りから家族が暮らせる3LDKまでさまざまなタイプを用意しています。

子育て世代には、子育て専用の一戸建て住宅「子育て支援住宅」をおすすめしています。町外から厚真町への移住を希望する子育て1世帯で一定の条件を満たしていればどなたでも申込みできます。かみあつまきらりタウンに現在15棟あり、家賃は月額5万6000円が基準額。扶養する18歳以下の子ども一人につき一月当たり5000円が控除されます。

その他、人気が高く競争率は激しいですが「空き家バンク」も利用できます。他にも短期間の移住体験「ちょっと暮らし」向けに生活必要品一式が揃った「ちょっと暮らし住宅」もあります。

このように家族構成や暮らし方、予算などに応じてさまざまな選択肢があるのが特徴です。「移住してすぐに家を建てるのはちょっと……」という場合でも、まずは町営住宅などを利用してしばらく生活をして様子をみてから土地購入を考えることもできます。厚真町の場合は比較的土地が安いので、賃貸住宅の家賃ぐらいのローンで家が購入できることがあります。

– 子育て世代としては、子育て支援住宅にとても興味を引かれました。他にも子育て世代向けの支援・サービスには何があるでしょうか。

小山:先ほども少しふれましたが上厚真地区の認定こども園「宮の森こども園」は、町役場に勤める職員有志によるプロジェクトで2016年に誕生したばかりの新しい施設です。建物には厚真町のカラマツ材などが使われていて子どもたちは地域の木にふれることができたり、こども園・子育て支援センター・学童保育の3つの機能がまとまっているので便利だったりと、非常に喜ばれています。他にも、放課後こども教室などの取り組みや、医療費の助成など子育て世代向けの補助を多数行っています。

– 仕事に対する不安をお持ちの方も多いのでは?

小山:役場では町内や近郊の求人情報を提供しています。
また、厚真町では地域おこし協力隊制度やローカルベンチャースクール、起業化支援メニューなども用意しているので、移住希望者の夢を叶えるために最適な方法を提案します。

デザイナーやカメラマンなどのクリエーターや、IT系など個人で事業をされる方には、「お試しサテライトオフィス」も用意していますので、ぜひ活用していただきたいです。
中心市街地にほど近い場所に昨年開設したばかりの施設で、木造(平屋/27.09平方メートル)のコンパクトな空間の中にオフィス部分と住居部分を備え、仕事をしながら宿泊することも可能です。デスクや椅子があるのはもちろん、Wi-Fiも完備し、静かな環境の中で集中して仕事ができます。私たち厚真町としても、さまざまな方が町内に来て、町民との交流を通して起こる化学反応に期待しています。テレワークに興味のある企業や個人事業主の方はぜひ気軽にお問合せください。
このほか、苫小牧市や千歳市は十分に通勤が可能な距離なので、両市の会社や工場に勤めながら厚真に住むという方も増えていますよ。

– 住宅、子育て、仕事環境づくりへのフォローなど、町としてさまざまな取り組みを進められていることが分かりました。ほかに移住を希望される方が気になることとしては医療があります。

小山:町内には診療所があるものの、大きな病院はありません。とはいえ、お隣の苫小牧市には大きな病院が2つあり、場所によっては厚真町から車で30分くらいです。都心に住んでいても病院へ行くのに30分ほどかかることを考えれば、不便を感じるほどではないと思います。

また町内には高校が一校有るものの、多くの高校生が苫小牧市などの町外の学校に通学しています。こういった自然環境に関わることは移住相談の際には必ず先にお伝えした上で移住を考えていただいています。私たちもメールや電話を通じてコミュニケーションを綿密にとり、不安を解消できるよう努めています。

私が厚真町に移住した理由

– 小山さんご自身も町外から移住されたと聞きました。どうして厚真町に移住したのでしょうか?経緯を教えてください。

小山:はい。厚真町に来る前は大手スポーツ用品店に勤めていて、新店舗の立ち上げのたびに全国各地を転々としていました。横浜からスタートして四日市、名古屋、札幌、旭川、苫小牧、宮崎といった具合に、短いときには1年ぐらいで転勤を繰り返していたんです。

厚真町を知ったのは苫小牧の店舗に勤務していたときです。当初は市内で住宅を借りていたのですが、家族が増えたこともあり、より良い住環境を求めて妻がインターネットで探していたところ、厚真町の定住促進住宅(町営住宅)にたどり着きました。正直にいうと、きれいで安かったというのが決め手です(笑)。勤務している店舗へは車で30分で、通勤にも便利でした。そこで1年ぐらい暮らしました。住んでいるうちに町内の方ともつながりができて環境としてもとても満足していたのですが、転勤で宮崎へ行くことになり、厚真を離れました。

ところが北海道からいきなり九州ですから、まったくカルチャーが異なります。一番困惑したのは子どもたちでした。気候が違う、文化が違う、言葉も違う。一番上の子どももまだ幼稚園児でしたから慣れるまでには時間がかかったし、心理的な負担も大きかったですね。宮崎県は暖かくて住みやすかったのですが、自分自身が転勤族である限りこれはずっと続くなと思いました。それで、家族のためにどこかに定住しようと考えました。

さてどこに住もうか?私の実家がある四国か、それとも妻の実家のある北海道か……。いろいろ検討したんですが、私自身のこれまでの転勤生活を振り返ったときに、地域と最も深いつながりができたのが厚真町だったので、「厚真がいいな。厚真にもう一度住みたい」と思いました。

とはいえ一番の悩みは仕事です。移住するためには転勤を前提とした今の働き方も変えなければならない。自分は当時34歳、家族は妻と子ども3人。はたしてすぐに良い仕事が見つかるだろうか…。そう悩んでいたときに、厚真町の知り合いから「役場が職員を募集している」と教えてもらいました。すぐに試験を受けて、なんとか一般職で採用していただき、移住を決断しました。

– 仕事以外に不安はありましたか?

小山:住まいも厚真町の知人がいろいろ面倒を見てくれたのでほとんど苦労することなく見つかりました。そういう意味でも、厚真町と私をつないでくれた知人の存在はとても大きかったですね。

– そうして2012年4月、晴れて厚真町に移住。この4月で丸5年ですね。ご家族はいかがでしょうか。

小山:妻も子どももすっかり厚真町に溶け込んでいます。一番上は小学5年生になりましたが、野球をやったり、サーフィンに挑戦してみたり。スポーツクラブなどの選択肢は決して多くありませんが、のびのびと育っています。
私自身は最初の3年間は観光セクションを担当し、2015年度から移住・定住促進を担当しています。

– 移住に際しての不安など、ご自身の経験が生きそうですね。

小山:そうですね。私としては、自分自身の経験も振り返りながら、移住者に寄り添った対応ができればと心がけています。移住を考える方は、立場も、家族構成も、抱える悩みもさまざまです。そのためにまずはニーズをできるだけ引き出すこと。どんな暮らし方がしたいのかを聞き、それに対して町としてどうお応えができるかを考える。移住促進のための支援メニューであったり、住まいや教育の情報であったり。そのうえで厚真町では難しいと思えば、ハッキリそう言います。たとえばご近所とのコミュニケーションを好まない方には厚真町のような小さなまちに住むのは難しいよ、とか。厚真町にできるだけ長く幸せに暮らしてもらうことが、私たちの責任でもありますから。

移住者と厚真町をつなぐ「橋」になる

– 移住・定住のご担当になってから3年目。印象に残っている方は?

小山:移住のお手伝いをさせていただいた方はどなたにも思い入れがありますが、特に印象が強いのはこのたび厚真町ローカルベンチャースクールに採択された佐藤稔さんです。

佐藤さんと出会ったのは、私が移住・定住の担当になったばかりの頃ですから2年前の春です。東京の移住フェアに佐藤さんが来られたのが最初ですね。キャンプで訪れて北海道を気に入り、移住を考えるようになったということで。
一番のネックは仕事でした。もともと個人で貿易業をなさっていたけれども拠点を移すことに不安を感じ、なかなか踏み出せずにいたんです。この春から小学校に入学する娘さんもいるため、子どもが小学校に入るタイミングを逃したら移住は諦めると仰っていました。

そうしたら厚真町でローカルベンチャースクールが始まることになり、応募してみてはどうかと提案しました。結果的に採択されて仕事を移すための目途がつき、移住を決断されました。ローカルベンチャースクールという手段が最後の一押しになったんですね。

– いろんなタイミングが重なったんですね。

小山:まさにそうです。ローカルベンチャースクールのスタートが1年遅かったら、移住を諦めていたかもしれません。家族で移住を決断するには多かれ少なかれ、さまざまな壁がある。それに対して町のリソースで解決できる手段はあるのか。そうしたマッチングを行うことが私たちの仕事だと思っています。

小山さんの場合は町役場の職員募集が移住を決めるきっかけになった。佐藤さんにはローカルベンチャースクールがあった。それぞれ仕事という問題を解決したことがパズルの最後のピースになりました。

どちらもきっかけを与えたのは「人」。小山さんの場合は会社員時代に知り合った厚真町の知人であり、佐藤さんの場合は小山さんでした。こうした「人」の存在が、移住には一番大切なのではないかと話を伺い思いました。

そんな感想を伝えると、「そうなんです。だから私自身が恩を受けたように、今度は私が移住を望む方と厚真町との“つなぎ役”になりたい」と小山さん。移住を考えている方は、移住者の先輩である小山さんを頼って、まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか。



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