好きなように生きていく、そのためにただやる。―木工作家WOOD IKOR(ウッドイコロ)鈴木大輔さんの選択と覚悟―

2024年3月27日

厚真町在住の木工作家WOODIKOR鈴木さんは2017年の秋ごろ厚真町に移住し、経験も知識もないなか独学で木工を学び、胆振東部地震の被災木を価値ある姿に生まれ変わらせています。30代前半まで様々な職を経験してきた鈴木さんが選んだ「好きなように生きていく」こと、そして木工作家という道。遠回りをしてもそれが楽しいと思える、と語る鈴木さんにこれまでの道のりや、次に目指す姿についてお話をお伺いしました。

雇われ続けるか、好きなように生きていくか。起点となった胆振東部地震

―鈴木さんのこれまでの経歴を教えてください。

鈴木:生まれは北海道室蘭市、育ちは江別市です。道内を回りながら、おそらく普通の人よりも様々な職種を経験してきました。建設業をやったり、不動産の営業をやったり、漁師さんの出稼ぎを手伝ったり。その時々で生活のために仕事をしたり、興味あることをやってみたり、自分の将来のことを大して考えずに生きていました。多分、若かったから遊びたかったんだと思います。前職は北広島市にある新聞の印刷工場です。

―厚真町への移住は何かきっかけがあったのでしょうか?

鈴木:そんなに深い理由はなくて、単純に自然が好きだったので田舎に家を買いたいなと思っていた時にたまたま厚真町の空き家物件を見つけて、直接見に行ったその日に即決しました。スノーボードが好きで江別市からニセコ方面に冬道3時間かけて通っていたので、その周辺でも探したのですが、条件が合う物件がなくて。20代前半くらいの時、厚真町にはサーフィンで友達に連れてきてもらったことがあって、横乗り繋がりでサーフィンもできるということも決め手になりました。

―厚真町には木工作家になるために移住をしたのでしょうか?

鈴木:小さい頃からものづくりが好きで、厚真町は自然に囲まれた環境なので移住したらDIYやものづくりをやってみたいと思っていました。ただ、移住した時点では木工作家になるとは決めていなかったですし、それまで木工に関わる仕事もやったことがなかったです。雇われ続けることへの不安があって、自分の好きなように生きていきたい、若いうちなら挑戦して失敗してもまだやり直せるし、なにかに挑戦するなら今が最後のチャンスだという想いはありました。でも、雇われる方が収入が安定していて安心という気持ちもあって、ずっと二の足を踏んでいたんです。

厚真町に移住してからもしばらく北広島市の印刷工場に勤務していた鈴木さん。当時は日勤も夜勤もある不規則な生活だったという。

―漠然と「好きなように生きていきたい」という想いはあったけれど、会社を辞めることには迷いがあったんですね。

鈴木:そんな時に胆振東部地震が発生して、印刷工場の勤務が難しくなったこともあって退職することになりました。そのうち、地震の土砂崩れで発生した被災木を捨ててしまうのはもったいない、この木を使って何かを作りたいと思うようになって、木工についていろいろ調べていたら、木工家の須田二郎さんの作品や考え方にたどり着いたんです。

須田さんは色々な理由で捨てられてしまう木を使って価値ある作品を作る木工家で、木を無駄にしないという想いに強く共感しました。それでちょっと木工をやってみようと、とりあえず器を作るところから始めました。

やりたいことをやるためならとことん学ぶ。まったくの素人から木工作家へ

―木工の経験はなかったとのことですが、どうやって勉強したのでしょうか?

鈴木:全部独学でYoutubeやSNSを見て勉強しました。この人は信用できる情報を発信していると思った人を自分でピックアップして見ています。例えば、Instagramで「写真に映り込んでいるこの道具や機械は何?」「このサイズと形状のノミは何に使っている?」みたいに普通の人だったらスルーするようなことを一つ一つ全部ほじくり返していくんです。全く知識がなくて、そういうところからのスタートだったのでめちゃくちゃ遠回りをしました。

―遠回りだと思っていても、独学で勉強を続けたんですね。

鈴木:職人の世界は技術を惜しげもなく無償で教えてくれる人はいないですし、弟子として雇って教えられる作家自体が限りなく少ないので、自分で勉強しようと思いました。だから、買ってみたけどあんまり使わないという無駄な買い物も結構しています。でも、買って失敗して学んでいくわけですよね。とりあえず調べる、勉強する、買ってみる、やってみる。そこからもっと疑問が出てきたり、どこかにヒントが転がってないか探したり、その繰り返しです。

―木工作家を始めてから苦労したことはありますか?

鈴木:木工作家になったのは2019年、開業届は2020年に提出したのですが、その直後にコロナ禍になって出店が決まっていたイベントや展示会も全部キャンセルになりました。開業したてで売り上げもなかったので支援制度などの対象にもならず、せっかく起業したのに売り場もなく、何も出来なかったです。やっとイベントや展示会に出展できるようになったのは2022年頃ですね。
やっていること自体は自分の好きなことをやっているので基本的に楽しいですし、努力が成長につながっていると感じていますが、木工作家として生活できるレベルで稼ぐのはやっぱり大変です。そもそも木工作家は商売として儲かる仕事ではないですし、木工作家一本で生活できるのは一握りの作家さんだけです。自分も今年スノーボードに行けていなくて、好きなように生きるために木工作家になったのに、本末転倒だと思うことがあります。

鈴木さんが製作している器やお皿、スプーンたち。ウッドターニング(木工旋盤)とノミを使用して1点1点手作業で削り出し、仕上げまで鈴木さんが行う。

――どんな時に木工作家としてのやりがいや楽しさを感じますか?

鈴木:自分が丹精込めて作った作品を手に取って気に入って買ってもらえると、答え合わせというか、自分が良いと思ったセンスの部分を他の人も良いと思ってくれたということなので、間違っていなかったと自信になります。また、以前購入してくれた方が「使いやすい」「すごくいいです」と笑顔で話してくれたり、リピートで購入してもらえたりすると「やっていて良かった、これからも頑張ろう」と思えます。あとは僕の考え方に共感して応援してくれる方もいるので、それもめちゃくちゃ嬉しいですね。

―工房「WOOD IKOR」の名前の由来はなんですか?

鈴木:「イコロ」はアイヌ語で「宝物」という意味です。自分が作った作品自体が「宝物」になって欲しい、そして木自体が「宝物」という想いを込めました。木は人間の都合で植えられ、切られ、いらなければ捨てられてしまう。それ自体に良い悪いはないですが、それならせめて作品として生まれ変わらせ、価値をつけた「宝物」として残してあげたいです。捨ててしまうくらいなら、食器として生まれ変わらせて誰かの食卓にいつも並ぶようになった方がいいですよね。

2024年2月には町内で箸づくりのワークショップを開催。木の温かみや木くずの香りを体験しながら、町内外の12名が自分だけの箸を作り上げた。

「あいつの人生、楽しそうだな」と言われるような人生にしたい。次に目指すのは他の人がやっていないこと。

―鈴木さんの今後の目標はなんでしょうか?

鈴木さん:今年から取り組んでいるのが、自分で切った木で作る「木こり木工作家」です。特殊伐採といって庭木や支障木、危険木、台風などで折れてしまった木で、どの方向にも伐倒できず、作業車も入れない場所の木をツリークライミングで伐る技術を勉強しています。捨てられてしまうもったいない木は特殊伐採の現場から出てくること多いので、技術を身に付け、自分で切った木を自分の作品として価値をつけて必要な人に届けるということをやりたいと思っています。自分で切るところから携わって、この木はなぜ切られたのか、どんな木が作品になったのかという木のストーリーを消費者に伝えていきたいです。

―「木こり木工作家」を目指そうと思ったきっかけはありますか?

鈴木:少し前まで木工作家として生計を立てるためにもっとたくさんの人に知ってもらわなければいけないと思って、テレビや雑誌などのメディアに出るようにしていました。そうしたらどんどん苦しくなってきて、「別に有名になりたいわけじゃない、好きなように生きていきたいだけ」と改めて気づいたんです。特殊伐採の仕事も受けられるようになれば、無理に木工作家一本で生計を立てる必要もないですし、自分がやりたい木工もできます。

―特殊伐採も経験がないところからのスタートだと思いますが、不安はないですか?

鈴木:他の人がやっていないことをやりたいと思っていて、特殊伐採も木工作家も本気でやっている人は全国にあまりいないと思うんですよね。これまでも植え付けや下草刈りの手伝いなど、林業の作業はしてきましたが、これからは林業と木工作家を両方ともさらに本気でやります。もしかしたら木工作家の人たちからも林業をやっている人たちからもあまりよく思われず、いろいろ言われるかもしれませんが、自分には自分の覚悟があります。自分がちゃんと出来るようになった時に結果で納得してもらえればいいだけだと思っています。

―鈴木さんの覚悟はどこから生まれてくるのでしょうか?

鈴木:覚悟というか、やるからには頑張ろうと思っているだけですね。失敗しても人より多くいろんなことを経験しているので、生きていくには困らないでしょうし、幸い自分にはなんでも二つ返事で応援してくれる家族もいます。好きなように生きていきたい、ただそれだけですよ。前職を辞めて木工作家になるとき、絶対に生活水準が下がることは自覚していたので、生活水準を下げる代わりに働いていた時に我慢していて手にできなかったものを全て手にしようと思ったんですよね。

やりたいことをやる、休みたいときに休む、趣味もできるという生活を自分が本当にできた時、「あいつの人生、なんか楽しそうだな」と言ってもらえると思うんですよね。そういう人になりたいですね。

―ありがとうございました。これからも鈴木さんの作品を楽しみにしています。

〇WOOD IKOR
URL:https://www.woodikor.com/
Instagram:https://www.instagram.com/woodikor/

〇鈴木さんが製作しているふるさと納税返礼品
・被災木のサクラから創られたボールペン/シャープペンシル
・ウォールナットから創られたボールペン/シャープペンシル
・GARAKUTA BLOCK5個セット(木製つみき)

各ポータルサイトの雑貨・日用品カテゴリからお選びいただけます。
・楽天:https://item.rakuten.co.jp/f015814-atsuma/c/0000000106/
・ふるさとチョイス:https://www.furusato-tax.jp/search/136?disabled_category_top=1&target=1&q=%E5%8E%9A%E7%9C%9F%E7%94%BA&kw=0

・漆塗りと手彫りの美しさにこだわったスプーン3種類が新たに仲間入り
https://item.rakuten.co.jp/f015814-atsuma/1269/ 
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