厚真町の産業の中心となっている農業。
ただ、生産者の高齢化や担い手不足は深刻な問題となっています。農業というあつまの「宝」を、100年後も引き継いでいくために。このプロジェクトでは、担い手育成、最新技術の導入、新しい事業開発の3つにみなさまからのご寄付を活用します。

厚真農業の多様性を未来へつなぐ3つの事業

「厚真町の農業はお米、麦、大豆など基幹作物をメインに、ほうれん草、かぼちゃ、ハスカップなど品目が多岐にわたります。さらに乳牛、肉牛、豚、鶏など畜産も幅広い。この多様性が厚真の良さかもしれません」と話す加賀谷さん。

人気のお米をはじめ、じゃがいも、ハスカップ、豚肉、卵など、さまざまな町の産物がふるさと納税の返礼品になっています。

「ふるさと納税の制度ができて、返礼品という形でこうした厚真の産物が直接全国の方に届けられるようになったことは、生産者の方々にとっても価値のあることだと僕は思います。
従来、農協出荷の野菜であれば『厚真』の名前が表に出ることはこれまであまりありませんでした。一方で、ふるさと納税の場合は明確に『厚真』の名前を冠して産物を全国各地に届けられます。厚真の名前をみなさんに知ってもらえ、しかもそれを応援していただける。これはとてもありがたいことです」。

しかし、おいしい食を幅広く生産する一方で、厚真町においても生産者の高齢化や担い手不足は深刻な問題となっています。厚真町の一次産業を次世代につなぐためにも、その対策が急がれます。

「北海道の恵みを世界に向けて実らせる農業経営者育成プロジェクト」では主に次の3つの事業を支援します。
一つ目は「農業担い手育成センター管理運営業務」。この事業では新規就農をめざす研修生のための研修農場の運営をサポートします。
二つ目は「農業ICT化普及推進事業」。この事業では農業分野での最新テクノロジーの導入を支援し、担い手不足などの課題解決をめざします。
三つ目は「元気な農家チャレンジ支援事業」。この事業では新しい農法や新規事業に挑む生産者のチャレンジを応援します。
それぞれについて加賀谷さんに聞きました。

新規就農に向けた「助走」のための研修農場

厚真町では今年、小学校の跡地を活用して「農業担い手育成センター」を開設しました。ここは、ひと言でいえば研修農場。新規就農をめざす研修生のための施設で、現在は8棟のハウスと露地栽培の畑を備えています。

研修農場には現在7棟のハウスが建っている

センター開設のねらいを加賀谷さんは次のように話します。

「厚真町で新規就農をめざす一つの道として地域おこし協力隊・農業支援員になるという方法があります。農業支援員に採用されたら最長3年間、町からの支援を受けながら農家さんでの研修を経て、新規就農をめざすことができます。ですが研修といっても、研修先で自分が将来栽培したい作物を好きに作らせてもらえるわけではありません。とはいえ、まったく育てたことがないまま新規就農するのも不安です。そういった機会を補完する目的で農業担い手育成センターを開設しました」。
みなさまからお寄せいただいたご寄付は、この農業担い手育成センターの維持管理や研修生たちが植えるタネ代に活用させていただきます。

厚真の場合は、安定的な収入が見込めるなどの理由でほうれん草の栽培を奨励しているので、ハウス8棟のうち7棟でほうれん草を栽培しています。
ただ、一般的に研修農場というと特定の作物のみの研修がほとんどですが、厚真町の場合はほうれん草に限らず、自分が希望する作物をある程度 自由に栽培することができるのも特徴です。

「現在はほうれん草以外にもハスカップや大根を栽培しており、今後は冬レタスやハウスでのイチゴ栽培を計画しています。また、現在いる研修生が就農時に作付けを希望しているピメントやブルーベリーの栽培も予定しています。ゆくゆくはセンターを巣立った彼、彼女らが厚真の農業に新しい可能性をもたらしてくれるかもしれませんね」。

「近年は担い手不足が深刻化し、新規就農者を喜んで迎え入れてくれる地域も増えてきました。Uターンで就農する後継者ももちろん大事ですが、Iターンで新規就農をめざす移住者も、まちにとっては大切な財産です。ふるさと納税のご支援で就農者を増やすことができたらうれしいことです」と話す加賀谷さん。

最新テクノロジーが地域を救う!

近年は町内で高齢のために農地を維持することが難しい農家が多くなり、体力のある近隣農家に農地を譲渡するケースが増えています。このため、農家の大規模化が進み、町内の平均耕作地面積は10年前の約2倍、約15haになりました。
受け皿となる農家にとっては耕地面積の拡大による収入増はうれしいところですが、新たな設備投資や労働力の確保も必要になります。

こうした数々の悩みを解決するために期待されているのがICT化です。
たとえばトラクターなどの作業機にGPS(全地球測位システム)ガイダンスを搭載することで、田んぼの代かきや農薬散布時に目印を付けたりせずとも、カーナビのように画面で作業状況を確認できるので作業の効率化が図れます。
さらにはハンドルを握らなくても自動でトラクターなどを操舵する技術が開発され、省力化や農作業事故の軽減への期待が高まっています。

自動操舵の田植え機

農地集約の流れはこれからも続くでしょう。いまは引き受けてくれる農家がいるけど、そのうち引き受け手もいっぱいいっぱいになって誰も耕せない土地が増えていってしまう。ですが今のうちから自動操舵などの技術の導入を進めていけば一戸の農家が耕せる面積が増し、厚真町から水田が減っていくのを食い止めることにつながります。水田が広がる町の景色は厚真の人びとにとっての原風景。厚真のお米は町の誇りなんです」。
ふるさと納税でお寄せいただいたご寄付は、個々の生産者がGPSガイダンスを導入する際の助成金などに活用いたします。

守るために、チャレンジのタネをまく

厚真の農業を「守る」ためには、新しい技術の導入や6次産業化といった「攻め」の姿勢も必要です。そうした農家の挑戦を応援するのが「元気な農家チャレンジ支援事業」です。
現在、実際にこのメニューを活用している取り組みとしては水稲の直播栽培があります。直播とは「直まき」のこと。稲を田んぼで作るときに苗を育ててから田んぼに移植するのではなく、田んぼに直接タネをまく栽培方法です。

直播により春先に苗をハウスで育てたり、その苗を移植する作業がなくなるので作業時間が格段に減ります。作業にかかっていた資材費・人件費が不要になる上に、育苗・田植え時期の労力をほかの作物の作業にあてることができるのです。
いいことずくめのようですが難しい面もあります。すでに直播栽培の普及が進む本州や九州に比べて春先の気温が低い厚真町でも、ちゃんと芽が出てくれるのか。出た芽がちゃんと育ってくれるのか。成功させるためにはどうやってタネをまいたらいいのか、どのように水の管理をしたらいいのか……。技術を確立させるためにも、実際に試してデータを取る必要があります。

町内では農家有志が研究会を立ち上げ、これに取り組んでいます。一般的な栽培方法よりも当然収量は減ってしまうので、技術が確立するまでは「元気な農家チャレンジ支援事業」の財源を使って助成しています。
直播栽培以外にも、減農薬・減化学肥料に取り組む特別栽培、厚真町の特産品である厚真産ハスカップのブランド化などが「元気な農家チャレンジ支援事業」の支援を受けてチャレンジを続けています。

多彩でおいしい厚真の食を、この先も生み出していくために。
農の未来を担う人びとの挑戦をぜひ応援してください!



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