子どもが授業でサーフィンをする厚真町。ポテンシャルの高いこのまちに暮らし、挑戦する人を募集!

2020年8月26日

厚真町が、まちの未来に向けて一緒にチャレンジできる人を求める「厚真町ローカルベンチャースクール2024」。

厚真町を舞台に新しい価値創造にチャレンジする仲間を発掘・育成・選考するプログラムで、今年度もエントリーの受付が始まっています。

起業や移住は、それまでの人生を変え、家族にも影響を与える大きな決断です。

それらを考えたとき、「子どもの教育環境」が気になる人は多いのではないでしょうか。

移住者であり、現在は厚真町教育委員会で生涯学習課長を務める宮下桂さんと、同課社会教育グループの斉藤烈さんに、まちの教育やユニークな取り組み、まちの様子について聞きました。

サーフィンなど“厚真ならではの経験”で生まれ育った地域への誇りを育む

— 2020年8月3日、厚真町の上厚真小学校の4年生が授業でサーフィンを行いました。そのほとんどの子にとって“初サーフィン”で、道内の授業としても初めての試みだったそうですね。

宮下:はい。厚真町の浜厚真海岸は年間約6万人が訪れる道内で有名なサーフポイントです。その海岸で、子どもたちが地域の文化や産業を学ぶ「ふるさと教育」の一環として行いました。実現するのは簡単ではなく、実は10年もかかったのですが、学校をはじめ、多くの方が関わってくださり授業にできました。

(授業にすることは)私にとってチャレンジでしたが、子どもたちの輝く表情を目の当たりにでき、おかげさまですばらしい授業になったと思います。「波に乗ったとき、顔に風を感じてすごく気持ちよかった!」といった子どもたちの感想が嬉しかったですね……。こういった経験の積み重ねが生まれ育った地域への誇りを育み、長い時間をかけて未来の地域づくりにも効いてくるのだと思います。

— 「ふるさと教育」はどういう経緯で始まったのですか?

宮下:国が進める小中一貫教育が、平成31年度から厚真町でも始まりました。厚真町には小学校と中学校が2校ずつあり、施設分離型で導入したので、「それぞれがバラバラに教育を行うのではなく、小中の9年間を一つの学校ととらえよう」と、どの時期にどんなことを学ぶかを再整理したのです。

そのなかで大きな柱になったのが「ふるさと教育」でした。厚真町のことを深く学び、「つなぐちから」、「拓くちから」を身に付けた「厚真の未来を語れる子」の育成を図ろうと決まったのです。そうして去年(2019年)から制度になり、先行的な取り組みとして今年度から始めた教育活動の一つがサーフィン授業です。小中一貫のカリキュラムは来年度から本格的にスタートしますが、社会教育では、ここ10年ほど「地域ならではの体験」を強く意識した活動は行っていたので、ようやく制度になったという感じです。

— 長年の積み重ねがあって、ここまでこられたのですね。

宮下:これまでの積み重ねが、もしかしたら今の彼らの力につながってきているのかな……と思う場面はあります。例えば、厚真町では英語教育にも力を入れていて、教育課程特例制度を活用し、8年ほど前から中学1年生から英語に親しむ活動を取り入れたり英語の授業時間数を増やしたりしています。

その成果として、文部科学省が毎年公表している英語教育実施状況調査では、令和元年度の英検3級相当以上の中学3年生の割合は、全国平均が44%であったのに対して、厚真町は81%になりました。全国トップのさいたま市の77%(文部科学省 令和元年度「英語教育実施状況調査」都道府県・指定都市別データより)をも上回る結果です。

今の(厚真町の)中学3年生の授業などを見ていても、自分の言葉で思いをきちんと周囲に伝える力が育っていると感じています。彼らが英語教育の実践としてオーストラリアに行った際の引率者も「厚真の子たちは、外国に行ってもコミュニケーションをとるのに物怖じしない。以前と比べると、そういう力が目に見えてだんだんついてきている」と力強く語っていました。

 

中学生も地元の事業者も得るものがある、新しい形の地域貢献

— 2020年8月から始まる「厚真プライドプロジェクト」とは、どのようなプロジェクトですか?

斉藤:「ふるさと教育」のなかの一プロジェクトです。新型コロナウイルスが流行している影響で、中学3年生は運動会や学校祭など、生徒たちが楽しみにしている行事のほとんどができなくなってしまいました。本来は令和3年度から始める予定だったのですが、「中学3年生に、地元の事業者さんとつながりながらリアルに地域を学べる取り組みを」という中学校の熱い先生方との話し合いのなか「前倒ししてやっちゃおう!」と急遽決まったんです。

内容は、中学3年生が25時間もの授業を使って、実際に地域に取材に行って動画をつくります。動画編集をして終わりではなく、その動画を全世界に広告として流します。その後、どの年代が見て購買したのかを分析し、事業者さんにフィードバックするまでを行うんです。お互いに得るものがある、新しい形の地域貢献です。今年度は中学3年生のみを対象にしますが、来年度から小中9年間のつながりのある本格的なカリキュラムとするため調整しています。

宮下:地域のことを調べて発表するだけではなく、「自分たちが調べて発信したことが社会にどう還元されていくか」も大切な学習です。不確かな時代のなかで人生を切り開いていくのは、自分の暮らしを自分でつくる力や、自分で考えて自分で決めて行動できる力、地域で自ら仕事をつくって課題解決につながるビジネスをしていく力ではないかと。ふるさと教育が育てる「つなぐちから」「拓くちから」とは、まさにそういったことだと思っています。

特に子どもたちが生きていくこれからの社会は、何が起きるか分かりません。今ある職業の多くが将来なくなるとも言われています。田舎でもそういう力を育んでいける地域社会や仕組みをつくりあげていくことこそが、私たちのゴールです。彼らが将来、ローカルベンチャーになる可能性だってあります。

斉藤:厚真町はハスカップとサーフィンとお米が有名ですけど、他の魅力についても知り、地域に誇りを持って「厚真町出身です」と言える中学生が増えたらと願っています。また、厚真町民から「ありがとう」と言われる経験を多くしてほしいと思っています。

厚真町の“人”と“自然環境”にポテンシャルがある

— お二人は「厚真冒険の杜(もり)プロジェクト」に関わっていたり(参考記事はこちら)、斉藤さんは「放課後児童クラブ」や個人活動で「厚真けん玉クラブ」にも携わっています(参考記事はこちら)。そしてお二人は移住者でもあります。厚真町の何に魅力を感じて、アクティブに活動されているのでしょう?

宮下:厚真町の教育には、より良くなるポテンシャルがあるんです。先ほどお話ししたように、思い描いていることに向かって少しずつ歩み始めていて、まちにポテンシャルを感じている方たちが集まり始めています。

具体的に何にポテンシャルを感じるかというと、まずやっぱり「人」ですね。いろいろな活動をしている人や、それに共鳴して一緒に動いてくれる人がいます。そしてまちには、その動きを受けとめる土台になる自然環境もあって、しかもまだフル活用されていない。今の厚真町は、白いキャンパスみたいだなと感じています。

斉藤:僕は厚真町に来て今4年目です。個人的な話をすると、自分の子どもたちの厚真町でのこれからを想像したとき、親としての感覚で「このままじゃいやだ」と思ったんです。子どもたちは、こども園から中学3年生まで同じメンバーでの1クラスということがほとんどなので、まちにいるおもしろい大人といっぱい出会って、選択肢や広がりを持ってほしいなと。

いろんな人に出会って「この人のここが好き」「苦手」とか、好き嫌いを表現したっていいと思っているんです。だからこそ、いろいろな人に出会える場づくりに携わっています。今、とにかく楽しいです(笑)。厚真町は、場づくりなどを実践している大人がいるまちですね。

宮下:今の話を聞いていて思ったのは、じゃぁ都会に住めばたくさんの人に出会えるのかと考えると、意外とそうでもなくて、都会のほうがむしろ地域の人間関係という点では閉鎖的な場合もあります。多様な関わりの可能性は田舎でも豊かにあると思うし、いつも新鮮な空気があっていろいろな人が入ってくるところは、このまちの魅力です。

だから子どもたちのコミュニケーションについて、僕は心配する必要はないと思っています。「ふるさと教育」は、自然以上に人との関わりをもつように設計していますし。

とはいえ、今は田舎も都会も社会全体の課題として、子育てをしづらい部分はあるから、地域全体が子育てに関われるような社会に少しずつ変えていくことが目標ですね。僕らが今取り組み始めたことを継続していけば、今の小学1年生が中学校を卒業する頃、その評価がでると思います。

もっと言えば、小中だけでなく、0〜18歳をつなぎたいなと。0歳児のときから保護者が幸せな子育てができるように、そして子どもも満足しながら楽しく共に育つ地域をどれだけつくれるか、常に考えています。

「厚真冒険の杜(もり)プロジェクト」の様子

教育とは、幸せになるための方法を学ぶこと

— お二人が楽しそうなのが、まちの様子を物語っているように感じます。

宮下:ようやく始まって、僕らは今ワクワクしています。正直に言うと道半ばで、学校も子ども園にもまだまだな部分がありますが、ポテンシャルがあるので、できること・やりたいことがたくさんあります。「あれも」「これも」と浮かんでくるくらい(笑)。これからすごく良くなると思います。そういう探究するプロセスを一緒に楽しめる人に、厚真町はオススメです。

斉藤:厚真町は僕にとって、やりたいことができるまちです。厚真町が好きだっていうよりも、そう感じて移住してくる人が多いんじゃないかな。僕は以前、道内の青少年教育施設で働いていて、土日にはよくキャンプをやっていて。「キャンプってこんなに楽しいのに、なんで毎日やらないんだろう」って思っていたんです。その思いは今も軸になっていて、「楽しいことをより多くの時間に多くの人ができたほうがいい」と考えています。学校の教育でそれができるならどんなに素敵なことだろうと思います。「毎日楽しいことができたらいいね」って思う人が増えたら、まちは必ず良くなります。

宮下:一過性のイベントの「体験」ではだめで、積み重ねて「経験」にしていきたいです。「教育って、幸せになるための方法を学ぶこと」だと思うんです。テストでいい点をとるだけではない教育の質・水準を、根っこから高めていきたいと思っています。

— お二人が見つめているまちの未来に共感する方は、ぜひ「厚真町ローカルベンチャースクール2024」にエントリーしていただきたいですね。厚真町で起業すれば、その一部につながることがあるのかもしれません。締め切りは、2024年11月30日(土)です。お二人、ありがとうございました!



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