【厚真町スポーツ振興支援員募集】地域で培われてきたスポーツの力をつなぎ合わせ、未来につなげる「総合型スポーツクラブ」の創設を目指す!

2024年3月5日

北海道厚真町では地域おこし協力隊制度を活用し「スポーツ振興支援員」を募集しています。この町にはスポーツ少年団が10団体、2つの中学校合わせて運動部が4つ、高校にも2つの運動部が存在します。各団体における指導者の高齢化、学校の先生の負担軽減など、地域のスポーツ環境には大きな課題があります。これらの課題を解決しつつ、こどもから大人まで幅広い世代が、それぞれの目的に応じて生涯にわたってスポーツを楽しむことができる環境づくりが望まれています。その具体的な方策として、スポーツ振興に熱意と情熱を持ち「地域スポーツ振興を担う民間団体」の立ち上げを目指す人材を募集しています。本記事では厚真町教育委員会の大垣崇(おおがきたかし)さんと、スポーツ振興支援員として実際に活動してきた歸山雄太(きやまゆうた)さんに厚真町のスポーツ環境や本取り組みの現状についてお話を伺いました。

厚真町を取り巻くスポーツ環境とスポーツ振興支援員の役割

――まずは大垣さんのお仕事・役割について教えてください。

大垣:厚真町教育委員会の社会教育グループ でスポーツ振興担当です。2018年の震災後に厚真町で採用され、現在の役割を担当するようになってからは4年目になります。

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厚真町のスポーツ環境やご自身の役割について詳しく説明してくださった大垣さん

――スポーツ振興担当とはどのような役割を担うのですか?

大垣:まずはハード面の管理で「施設管理」になります。厚真町には「スポーツセンター」、「あつまスタードーム」、「かしわ公園野球場(両翼90m、センター110m、夜間照明あり)」、「上厚真中央公園野球場」、「厚真町民スケートリンク」、「浜厚真野原公園サッカー場」、「厚真中学校陸上競技場」、「パークゴルフ場(3か所)」といった施設があります。これらの維持メンテナンスおよび利用者の管理を行います。ソフト面では年間通してスポーツ関連イベントの運営に関わります。「集まリンピック(町民体育祭)」、「ふれあいマラソン大会」、「ミニバレー大会」、「スケート記録会」、「室内ソフトボール大会」や子ども向けには「水泳教室」、「スケート教室」も実施します。

雪の上でスキーをしている人々  自動的に生成された説明
厚真町内のスケートリンクで行われたスケート記録会の様子。優勝を目指して一斉にスタート。

――今回募集するスポーツ振興支援員の役割を教えてください。

大垣:スポーツ振興ですから「厚真町のスポーツを盛り上げる」ということになりますが、募集要項には次のように記載しています。「1 運動部活動及びスポーツ少年団の活動支援」、「2 運動部活動の地域移行化の推進と持続可能な部活動環境の構築」、「3 本町の地域特性に適した青少年スポーツの在り方の検証・検討」 、「4 部活動を含む地域スポーツ振興を担う団体の創設・運営」、「5 教育委員会及びスポーツ少年団連絡協議会、近隣市町のスポーツ関連団体との連絡・調整」、「6 生涯スポーツ振興事業に関わる業務」です。

――大垣さんが行っていることと重なりが大きいですね。

大垣:はい。厚真町は4,300人規模の自治体にしてはハード面で非常に恵まれていると思います。一方でソフト面ではもっともっと力を入れていく余地が大きいと思っています。とはいえ、私一人で担うには手に余ってしまいますので、一緒にアイデアを出し合いながらひとつひとつ企画を形にしていければと思っています。

――企画を形にするにあたり最終的に教育委員会の確認も必要になりますか?

大垣:スポーツ振興支援員は地域おこし協力隊として「個人事業主」の立場でこの事業に関わります。なので、教育委員会と打ち合わせをしながら趣旨に則り自らの意思と責任で進めていくことができます。

――それはスピーディーに進められそうですね。厚真町のスポーツ関連団体のことも教えてください。

大垣:町内にはスポーツ少年団が10団体あります。中学高校の運動部は全部で6つです。一番古い団体は1979年設立の少年野球チーム「厚真ファイターズ」ですね。地域特性を活かしたスピードスケートやサーフィンの団体もあります。

――少年団だけで10団体もあるんですね。課題感はいかがでしょうか?

大垣:どこの過疎地でも同じだとは思いますが、少子高齢化が進んでいるので、指導者の高齢化や子どもの数が集まりにくくなっているといった事情はあります。部活動に関しても学校の先生の負担を軽減するため「地域で部活の役割を担う」流れになってきています。

スポーツ振興支援員として取り組んできたこと

――歸山さんのこれまでの経歴について教えてください。

歸山:大学を卒業した後、企業の支援などを受けながらスピードスケートの選手として冬季オリンピックへの出場を目指して活動していました。日本代表選手として世界大会へ出場したり、国民体育大会で優勝したりと実績を残すことは出来ましたが、オリンピックへの出場は叶わず競技者としての生活に区切りをつけて、地元の苫小牧市に戻り、一般企業へ入社しました。そこで働きながら外部指導者として子供たちにスケートを教えていました。

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スポーツ振興支援員の歸山さん。この仕事のやりがい、楽しさについて語ってくれました。

――厚真町のスポーツ振興支援員になろうと思ったきっかけは?

歸山:これまでのスピードスケートの競技者としての経験を活かして、スポーツに携わる仕事がしたいと思っていました。知人から厚真町で「スポーツ振興支援員」を募集していることを聞いて、ぜひやってみたいと思ったので応募しました。

――スポーツ振興支援員としてどのような活動をしてきたのでしょうか?

歸山:まずは町のスポーツ環境の事を知るために情報収集をしました。町内のスポーツに関わる活動に積極的に参加して、関係者や町の人たちとの交流を図ってきました。

これまでの取り組みは大きく分けて3つです。

①厚真町で「総合型スポーツクラブ」設立に向けた準備。

厚真町内でスポーツと文化活動を行い、コミュニティづくりの場となる「総合型スポーツクラブ」の設立に向けて、北海道内ですでに取り組んでいる枝幸町、標津町、鷹栖町の視察へ行き、設立に必要なこと、運営していくうえで大切なことなどを学びました。活動の中でスポーツに関わる様々な人と交流する機会に恵まれ、多くの人脈をつくることができました。そこから総合型スポーツクラブの知識を吸収しました。統合型スポーツクラブ設立準備委員会の委員として、「厚真の現状から、スポーツだけではなく文化活動を合わせた厚真スタイルの活動による生きがいづくりをしていきたい」と定例検討会議でプレゼンテーションをして、設立の承認を得ることが出来ました。

②地域のスポーツ活動の企画・運営

町民がスポーツ活動を通して町民同士が交流できる場をつくるためのイベントを企画し、運営しました。具体的には集まリンピック、体力測定、エンジョイスポーツ教室、上厚真ふれあいタイム、スケート大会、マラソン大会などです。

③スケート少年団の指導・育成

スケート少年団の厚真SPEEDでこれまでスピードスケートの競技者として私が経験してきたことを活かして、スケートの技術を子供たちに伝えてきました。小学校のスケート教室では年間で10回程度、小学生たちに教えました。

気軽にスポーツを楽しんでもらうために新たに歸山さんが企画した「エンジョイスポーツ教室」。まずは簡単な運動で体を動かします。

――この一年間活動をしてきた中で印象に残っている事はどんなことですか?

歸山:最初は総合型スポーツクラブの事もほとんど何も分からず、手探りの状態で活動を始めました。他の地域へ視察にいったり、会議に参加して関係者とコミュニケーションを図ったりするなど、地道にひとつずつ進めてきた結果、総合型スポーツクラブ設立の検討会議の中で承認を得ることができたのは今後の自信になります。地域のスポーツ活動では、町民と一緒にスポーツを楽しむためのエンジョイスポーツクラブを、ゼロから企画をして実施しました。企画から実施まで人が集まるかどうかの不安もありましたが、当日は30名ほどの方が参加し、スポーツを通して町民の方々とつながりをつくることができました。その他、集まリンピックは町民の約1割の方が参加するというビッグイベントで、厚真町が作り上げた歴史的な行事に参加できましたし、少年団のスケート指導では、私が一番関わっている選手が自己ベストタイムを大幅に伸ばし、全道大会で6位に入賞したことがとても嬉しかったです。

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厚真町内の自治会対抗で競う集まリンピック(町民運動会)団結力が高まります。

――総合型スポーツクラブ設立に向けて、歸山さんから見た現在地を教えてください。

歸山:今後の課題は人材の確保です。現在は地域のスポーツ活動を通じて町民とのつながりをつくりながら、一緒に運営していく人材の確保を進めています。また、スポーツ以外の文化活動もできる団体にしていきたいので、地域内外の新たな人脈作りが必要と感じています。

スポーツ振興が地域振興へつながる。その兆し。

――地域における「スポーツ環境の持続可能性」をどう担保していくか?という課題の解決に向けた方針や方向性はあるのでしょうか?

大垣:「総合型スポーツクラブ」と言われるもので、募集要項の「部活動を含む地域スポーツ振興を担う団体の創設・運営」の部分がそれにあたります。複数の種目で活動し、月額会費制、学生だけでなく多世代で利用・活動します。いわゆるスポーツだけでなく「ヨガ」のようなことを行っているところもあります。隣町の安平町には「アビースポーツクラブ」、むかわ町には「むーブスポーツクラブ」があり、参考となる取り組みが近くにあります。

――複数のスポーツが一か所で楽しめて、多世代が関わる仕組みは魅力的ですね。

大垣:ひとつの種目を深く極めたい人、いろんな種目を楽しみたい人、様々なニーズに応えられるのではないかと思います。子どもだけで人数が足りない場合でも大人も一緒になって関わることでチームスポーツも運営できると思います。冬場はスケートをして、それ以外の時期には別のスポーツに変えてみたりもできると思います。

――これが実現される際には、これまで独立して運営していた団体が一緒に活動することになります。各団体の反応はいかがですか?

大垣:団体それぞれの事情もありますし反応は様々ですが、各団体の合意をとるように準備も進めてきています。各団体の人手不足といった事情はありますし、ともに活動することで人員を補い合ったり、保険を一つにまとめることができたりといったメリットもあるので、大きな流れとして前向きな方向かと思います。

――とはいえ、実際に形にしていくには様々な調整が必要になりますよね。

大垣:そうですね。各団体や地域の関係者と、丁寧に対話を重ね調整していく能力が必要になると思います。ご自身がスポーツ好きといったところももちろん大切ですが、自分ではそんなにスポーツをしないとしても「マネジメント」に興味がある方にも向いていると思います。

――団体の創設だけでなく「運営」も見据えてやれる人ですね。最後にスポーツ振興が地域に与える影響や可能性についてどのように感じているか教えてください。

大垣:ひとつの例として中学のときにスローイングクラブで砲丸投げをやっていた生徒が全国で優秀な成績を収めたのですが、その彼が地元の厚真高校に進学しました。彼自身の働きかけもあり、高校で陸上ができる環境になりました。その影響で今年の中学生は4、5名が厚真高校への進学を考えています。このようにスポーツ環境が充実することで、地域の子どもが地域に可能性を感じて残っていく。その取り組みが多世代にわたって構築できれば、スポーツが町を元気にしていく力になれるのではないかと感じています。

歸山:スポーツ振興支援員の仕事はスポーツ経験がなくても、スポーツや人と関わることが好きな人ならぜひ挑戦して欲しいです。スポーツを通して地域の方々と交流したり、関係者とコミュニケーションを図ったりしながら進めていくことが楽しいです。やったことが少しずつ形になっていくことに充実感が得られる、やりがいのある仕事だと思います。

――お話を伺って、各団体との調整は大変かもしれないですが、形にしたときの達成感やその後の可能性もある、とてもやりがいがあるお仕事だなと感じました。

大垣:興味を持っていただいた方はぜひご応募いただいて、一緒に取り組んでいただければと思います。ぜひ、厚真町へ!よろしくお願いします。



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