自分たちのコミュニティは、自分たちでつくる-
「住民として」村上さんの20年プラン
2022年7月22日
上厚真地区で2021年にオープンしたtacoo cafe。(インタビュー前編「おばあちゃんも、サーファーも。誰もが気軽に立ち寄れるtacoo cafe」) 浜厚真海岸から近くサーファーも多く訪れるこのカフェで、いつも笑顔で迎え入れてくれるのは店主の村上朋子さんです。
村上さんは、カフェの開業と同時期に地域福祉のための任意団体を立ち上げ、地域コミュニティの中でも様々な活動を行なっています。
「このカフェは、あくまで私が地域でやりたいことのツールのひとつなんです」と話す村上さん。村上さんが持つ地域への想いを伺いしました。
私がやるしかない! 覚悟を持って、そして楽しく。
- 村上さんは2021年にtacoo cafeを始めたということですが、地域でも様々な活動をされています。どのような経緯で始められたのでしょうか。
村上 もちろんカフェ開業は自分がやりたかったことでもあるんですが、一番はコミュニティの中での地域福祉を進めたいという想いで、いまの働き方をスタートしたんです。
以前は厚真町社会福祉協議会(以下、「社協」)に勤めていたのですが、平成30年北海道胆振東部地震で被災したあと地域コミュニティを立て直すために色々なことを試みました。(社協勤務時代の村上さんのインタビュー記事「厚真町の人たちは住民力が高いんです」)
ただ、災害から復興へ向けて歩んでいる中で、被災した住民自身が主軸となって支え合い活動を展開するのは、どう考えてもハードルが高かったんです。でも、行政や社協のような公的な組織が主導するとどうしても柔軟なコミュニティにはなりにくいし、「自分たちのコミュニティは自分たちで作ろう」という意識も生まれにくいなと感じていました。
もっと住民側で主体的に動くコーディネーターのような人材が必要だと考え、それなら、社協をやめて「一住民として自分がやるしかないな」って思ったんですよ!しかも義務でやるのではなく、楽しんでやる、やりたいからやる、ということをしたいと。
- だからこそ住民として活動したい、ということになったんですね。もともとそのように地域コミュニティに関わりたいというお気持ちがあったんですか?
村上 厚真町に移住したときから、そういうことをしたいなと思ってはいたんです。自分が暮らす町だから、自分たちで良くしたいんですよ。
移住して時間も経ち、厚真で多くの人と知り合うことができた今ならより多くの人と協力してやっていくことができる。被災から立ち直っていくこのタイミングで住民として支え合いができる活動を進めていかないといけないという危機感もある。そうして地域でやりたいことも明確になって「今ならできる!」と、覚悟を決めたんです。
- いまはカフェと並行してどのような活動をされていらっしゃるのですか。
村上 まずは、任意団体「つむぎ」を立ち上げました。地域の中で、お年寄りを中心とした生きがいづくりや健康づくりのサポートをしています。ストレッチや体操の活動を通じて定期的に家から出てきてもらう機会にしたり、おばあちゃん向けのメイク体験会なんていうことも企画しました。
それから若い世代の女性同士がつながれる機会が欲しいという声を受けて「なないろ」という活動も始めています。20代から40代を中心に女性が集まって、セルフケアとしてヨガをしたり、ちょっとした悩みを共有したりする場ができるようになればと思っています。
村上 これからはカフェも色々な形でやっていきたいと考えています。地域のおばあちゃんの活躍の場所として手料理を出すようにしてもいいし、学生や若い人でカフェ出店の夢を持つ人に1日店長をしてもらうこともできるかもしれません。それから、お店の前で「あつマル市」というマルシェを開いて、地域の野菜や、住民活動で作った作品の販売も計画しています。
なんだか、やりたいことがどんどん出てきちゃうんですよ!
- とても楽しそうですね。実際に地域で様々な活動をするようになって、なにか感じることはありますか。
村上 自分が団体を作ってやるようになって、本当に色々なことが見えてきました。例えば活動のために会場ひとつを借りるにしても、すごく色々な手続きが必要で。「こんなに大変だったのか!」って思いましたね。もちろん費用がかかる部分もありますし、これまで地域の中で頑張って住民活動をしてきた皆さんを本当に尊敬します。
そして、自分が思っていた以上に地域の中でコミュニティのことを想っている人はたくさんいたし、楽しそうだからやりたいと言ってくれる仲間もどんどん増えてきました。仕事で地域に関わっている時とは全く別の視点を持てるようになりましたね。
村上 まだ始めたばかりですし、もちろん大変なこともあります。地域に関わっていくことというのは時間もかかるし、不意に嫌な思いをしてしまうタイミングもありますから。
でも、私は20年プランで考えているんですよ!自分が70代になって、子どもが独立して、旦那にも先立たれた、そんな時にひとりぼっちにならないためにいまからコミュニティをつくるっていう気持ちなんです。そう考えたら、ちょっとうまくいかないことがあっても平気。焦らなくていいと思えますしね。
- 今後はどのような活動にしていきたいと考えていますか。
村上 地域の中で人と人が出会って、そこに化学反応が生まれる。そんなふうに良い出会いから良い未来が生まれていく瞬間がすごく好きだし、わくわくします。それをたくさん積み重ねられたらいいですね。
そして、そうやって生まれたものが、さらに他のものと混ざり合ったりして流動的に変わっていったりもします。地域は変わっていくものだし、人も変わっていきます。その時々で柔軟に流れながら、住民同士のつながりをもって、自分たちが生きていくコミュニティを少しずつつくっていきたいと思っています。
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2022年7月31日10:00~15:00 tacoo cafe店舗にて「あつマル市」開催決定!
地元野菜やクラフト作品などの出店を予定しています。(小雨決行)
詳しくは >> tacoo cafe ※外部サイトへ移動します