Eターン厚真(あつま)れ!北海道厚真町でもローカルベンチャースクールが始まります。

2016年7月17日

Eターン(Entre-turn=起業家型移住者)の発掘・育成を目指して、厚真町ローカルベンチャースクール2016(主催:厚真町役場、企画・運営:エーゼロ株式会社)が始まります。西粟倉村に続く2つ目の開催地が厚真町になったのは、移住者の人生を大切にして、その人が夢を実現していくことを支える文化がすでに醸成されている地域だったから。この町で、やらないわけにはいかない・・と思える地域でした。厚真町ローカルベンチャースクールはどんなプログラムなのか、その企画・運営の責任者という立場から紹介します。

厚真町は今年もローカルベンチャースクール2024を開催します。エントリーはこちら

「地域資源」や「地域課題」ではなく、人を起点に

まず、そもそもローカルベンチャースクール(以下、LVS)とは何かということについて、ご説明します。LVSはローカルベンチャーの発掘・育成を行う起業支援プログラムです。2015年に岡山県西粟倉村で始まりました。エーゼロ株式会社は、自治体、当該自治体の民間企業、外部専門家等と連携して、このプログラムの企画・運営を行っています。

ローカルベンチャーとは、「地域を舞台にして自らの可能性を開拓していく存在」です。その地域に眠る資源を掘り起こし、自分のやりたいこととかけ合わせながら、価値を創造する。結果として雇用が生まれ、地域経済を活性化し、地域課題の解決にも貢献します。そうして、その地域の「地域らしさ」と言える空気が、少しずつ出来ていく。その人らしくある人、活性化している人が増えていくことで、地域は活性化していきます。

つまり、「やる人」が起点となり、その結果として、重要な効果が地域にもたらされる。ローカルベンチャースクールの運営にあたり、地域資源や地域らしさというものを先に決めてしまうのではなく、「やる人」を起点とする価値創造の連鎖が、ローカルベンチャーの生態系を創発していくことになると考えています。

個人的には、「地域資源」とか、「地域課題」とか、「合意形成」という言葉が嫌いです。というか、それらを意図的に無視しないと、大切なそれらを大切にできない。農山漁村振興に関わる調査研究やコンサルティングなどに関わることになって、20年ほどになりますが、これらの言葉を重視するから、うまく行かないということが分かっています。それらは、すべて結果として発生するものなのに、それらを起点とするプロセスを考えてしまうからうまくいかないんです。結果は結果であって、コントロールできないし、コントロールしようとしてはいけない。

「地域資源」も「地域課題」も「合意形成」も、とってもとっても重要なことだからこそ、それらを意図的に無視して、「やる人」と「その人の想い」を起点にしないといけない。そうしてこそ、結果として、地域資源が発見・活用され、地域課題の解決が進み、合意に基づき力を合わせてさらに大きな課題解決に向かうことができるようになっていくと考えています。

「無いものねだりより、あるもの探し」という言葉があります。この言葉があまりうまく機能しないのは、「で、誰がやるの?」ということが置き去りになっているから。そこには「やる人」が見えない。「地域にあるもの」は無限に多様に存在しています。無限に存在する中から、価値創造につながる資源を見つけ出すのは、「何かをやりたい誰か」がいてこそ。「あるもの探し」より大事なのは、「やる人探し」なんです。

だからLVSは、「やる人探しとやる人支援」のプログラムです。「やる人」によって、何が地域資源かということは変わります。それが資源かどうかは、とても相対的なことです。役場などが、「これが地域資源です」と言ってしまうことで、実は地域に眠る多種多様な「その他の資源」の可能性を勝手にそぎ落としてしまうことにもなります。

「地域課題を前提にすべきではない」とここで述べつつも、一方で、厚真町LVSのウェブサイトでは「こんな起業のテーマがあります」という例示をしています。これはあくまで参考情報として扱っていただいて、エントリー者の個人的な想いを起点にした新規事業の企画を出していただきたいと考えています。個人的な想いや夢を起点にしないと、成功するまで頑張り続けることができないし、「地域のために」という意識では、うまく行かない時に自分を犠牲者のように考えてしまいがちです。

自分を起点にしながら、他の人の想いを参考にしていく。エントリー者の想いが、他の人の個人的な想いとつながり重なっていくと、強いエネルギーをもった事業となり、その成功確率は高まっていきます。想いと想いがつながって増幅されていくような新規事業が出てくるといいなという期待からテーマを提示していますが、そのテーマに合わせて提案して欲しいのではなく、あくまでも参考情報と捉えていただけたらと考えています。

厚真町ではすでに人を起点とする文化が醸成されていた

2015年にLVSが岡山県西粟倉村で始まったのは、西粟倉村役場のみなさんがとても柔軟で前向きで、人を起点とするという姿勢を持たれていることで実現したものでした。これは西粟倉村だからできるプログラムだな…と思いながら、その企画・運営をさせていただいておりました。もう少し厳密に説明すると、LVSはどこでもやれる可能性はあるものの、それがやれる状況になるまでの準備期間がそれなりに必要なのです。

・真剣に何かに挑戦する人がすでにいること。
・その人の挑戦の積み重ねが一定の評価を得るところまで成果を出していること。
・そういう人が増えるといいなという空気が醸成されていること。

これらが、LVSが成立するために必要な準備です。

北海道厚真町には、人を育て生かす文化を持つ町役場がありました。エーゼロ株式会社が、西粟倉村で始まったLVSを厚真町でも行うことを引き受けたのは、厚真町役場はLVSをやるための準備がすでにできていたこと、町役場の人づくりの姿勢に強く共感したことからです。厚真町役場は、30代の若い役場職員に挑戦する機会を与えてきています。若い役場職員たちは、部署横断のプロジェクトを立ち上げるなど、次々と主体的な挑戦を始め、町長や町役場の先輩たちは、その挑戦を見守ってきました。

「何かに主体的にチャレンジする人たちが地域に増えていくといいよね…」という空気が、厚真町役場ではすでに醸成されていたのです。そんな人づくりの文化が、町役場から染み出して、町全体に広がろうとしていると感じたのは、厚真町役場における地域おこし協力隊の受け入れと育成方法からでした。協力隊となった若者が自立していくために、役場職員が一人一人の協力隊員と丁寧に向き合い支えるということが、当たり前のこととして行われていたのです。

挑戦者たちが新たな挑戦者を育てて行く

厚真町でLVSの運営に関わる素敵な人達が現地におられます。何かにチャレンジしてきた人たちだからこそ、そういう人たちを地域で増やしていくLVSに興味を持ち、その運営にがっちりと関わってくださっています。

まず役場職員の宮さんです。林業専門職員なのに、なぜかLVSの役場側の責任者。林業という業務範囲を飛び出して、主体的に挑戦を続ける役場職員。挑戦の機会を与えられ、挑戦を続けてきた30代役場職員たちの中でも中心的な存在です。こういう、挑戦的で少し暴れん坊なぐらいの役場職員の人がいてこそ、ローカルベンチャー育成が実現できるところがあります。

協力隊OBでデザイナーとして自立している渡辺さん。今回の厚真町LVSのデザインを担当していただき、とても素敵なイラストも描いてくださいました。渡辺さんのご主人も地域で起業した協力隊OB。厚真町に面白い人がもっと増えて欲しいと思っておられる渡辺さんは、厚真町LVSの運営に前のめりに参画してくださいました。

宮さんにしても、渡辺さんにしても、厚真町で挑戦してきた人たちがいて、さらにこれから挑戦する人を応援しようとしている。こうして、ローカルベンチャーが増殖していける。宮さんや渡辺さんだけではありません。役場の中や、町の中に、LVSに関わってくださる素敵な方はまだまだいっぱいおられます。LVSをやっていく中で、また関わってくださる方は増えていくはずです。そして、ローカルベンチャーの生態系は、地域内の多様性と関係の密度を高めつつ、どんどん豊かになっていくことでしょう。

厚真町では、かつて開拓民として移住した人たちがいました。今の厚真町民は、その4代目、または5代目が多いです。これから厚真町にEターンする人たちは、新世代の開拓民。厚真町という舞台に立ち、自らの可能性を開拓し、そして結果として厚真町に眠る可能性を開拓していく。厚真町LVSでは、そんな新・開拓民が育っていくことを目指しています。

地域のために、というよりも、まず「自分を幸せにする覚悟をもって」エントリーしてくださる方を、心よりお待ちしております。厚真町役場の人たちは、きっとあなたが幸せになるために、「自分たちのことをしっかり利用して欲しい」と言って、その挑戦を精一杯応援してくれると思います。

ローカルベンチャースクール2024 チャレンジャー募集はこちら


他の記事を見る

#ATSUMA