札幌で、厚真を語りつくす!交流イベント「厚真ナイト」<前編>

2020年3月23日

厚真でチャレンジを続ける人たちと、札幌近郊の人たちによる交流イベント「厚真ナイト」が2020年1月25日に行われました。
テーマは「ココからはじまる、イチからのチャレンジ」。
いったいココから何がはじまるのでしょうか。イベントの模様をリポートします。

11のチャレンジ、それぞれの想い

札幌駅そば。商業ビルの地下1階にあるダイニングバーは熱気に満ちあふれていました。フロアには厚真から駆けつけた人たちと札幌市内や近郊から集まった人たちが混ざり合って思い思い話に興じています。制服姿の高校生もいれば、白髪の紳士もいます。あるところで農業の話をしているかと思えば、別の場所では教育の話に花が咲いています。趣旨を知らない人がこの場にまぎれこんだら、きっと何の会なのかさっぱりわからないでしょう。「厚真ナイト」の会場はさまざまな個性が入り交じり、不思議な高揚感に包まれていました。

「厚真ナイト」は、地域に関心を寄せる札幌近郊の人たちと厚真をつなぎ、新しいコミュニティをつくるために企画されました。

プレゼンタイムでは厚真側から役場職員の宮久史さん、教育委員会の斉藤烈さん、「ハスカップファーム山口農園」の山口善紀さん、漁師・澤口研太郎さん、「厚真町ローカルベンチャースクール2018」で採択された中川貴之さん、成田智哉さん、「株式会社エーゼロ厚真」の花屋雅貴さんの6名が登壇。札幌側からは5名が登壇して、それぞれのチャレンジについて熱く語りました。

最初に登壇したのは宮久史さん。投げる言葉はいつも直球です。「地域が持続可能になることが日本を変える一歩になる、そう信じています。持続可能性を高めるために大切なのは課題解決に挑み続けること。だから今、ローカルベンチャーという試みのなかで、人をベースに課題を解決していこう、プレーヤーを呼び込んで地域を活性化させていこうとしています。ここ最近、移住者だけではなく、町内からも挑戦する人がどんどん増えています。僕自身はそうした方々をそばで見るなかで、厚真町の未来がすごく明るくなる気がして、ワクワク感を抱きながら日々、仕事をしています」。

2番手は、北海道胆振東部地震の直後から子どもたちの居場所づくりに奔走した斉藤烈さん。「地震を経て思うのは、人を救えるのは人だけ。そのつながりも人がつくる。このことをみなさんに伝えたい」。

山口善紀さんは2020年に取り組む新たな挑戦について語りました。「宿をつくろうと思います。農家民泊です。カフェスペースもある、加工設備もある。いろんな可能性に満ちています。でも、一人じゃ何もできません。ぜひ、みなさんの力を貸してください」。

中川貴之さんは、木の伐採から製材、加工、販売までを一気通貫で行う林業の新しいビジネスモデルに挑戦中です。「その第一歩は木を植えることなんです。今度のゴールデンウィークを肉体労働に捧げたい人、アルバイトに来てください!」。

澤口研太郎さんは同級生の岡橋篤志さんとともに登壇し、3月19日にオープンするコミュニティスペース「イチカラ」のプロジェクトを紹介しました。「まちの中と外の人が関わりをもち、楽しい話をしたり、イベントを通じてまちの未来を一緒に開いていけたらと思っています」。

成田智哉さんの特技は、さまざまな立場・属性・領域のひと・ものをかき混ぜること。「それでマドラー(かき混ぜる)という名前の会社を立ち上げました」。現在は「移動から出会いの場へ」をコンセプトに、新しいモビリティインフラの構築に挑んでいます。

厚真町プレゼンのラストは「株式会社エーゼロ厚真」の花屋雅貴さん。「厚真町とみんなをつなぐ」エーゼロ厚真の取り組みについて紹介しました。

続いて札幌側のプレゼンタイム。最初に登壇した小林宏幸さんは“犬にやさしい”ドッグフードを手がける会社を経営しています。「本業とは別に副業で塾の先生をしています。子どもと関わることがすごく好きなので、教育に関する活動に携わりたいと思っています」。

藤女子大学の稲垣菫さんはクラゲの形をしたクッキー「くらげっきー」を引っさげ、道内各地でイベント販売しています。2020年の「あつま国際雪上3本引き大会(以下、3本引き)」に出店者として参加し、厚真産のハスカップを使用した商品を販売しました。

酪農学園大学に通う深井咲良さん。「食を切り口に、職業や年齢が違っても暮らしていける地域や環境をつくっていきたい」と、出身地の遠軽町はもとより、全国津々浦々に足を運んで、農漁業のお手伝いをしたり、食に関するイベントを精力的に企画しています。

北海学園大学の髙木桂佑さんは、全国に3拠点ある「ヒト大学」の取り組みに賛同し、北海道にも「自分らしく生きていける若者を増やしたい」という思いで「北海道ヒト大学」を立ち上げました。「地域で暮らす人と、札幌の学生をつなぐハブになりたい」と語ります。

北海道大学大学院で心理学を学ぶ瀬川康さん。社会教育に興味があり、ゲストハウスでの学童に携わっています。「子どもたちの将来の夢がファンタジーになりがちなのは、社会との結びつきがないからでは?」という問題意識を持ち、子どもと遊びと仕事を結びつけた仕組みづくりにチャレンジ中です。

酪農学園大学の秋山緋更さんは2019年にキッチンカーを購入して起業し、「バブルワッフル」を販売しています。地域の特産品を活用した「ご当地あんこプロジェクト」に取り組み、厚真産のハスカップを使用したハスカップあんを開発。2020年の「3本引き」で販売しました。

イベントで、終わらせない

厚真側プレゼンと札幌側プレゼン、それぞれのあとに設けられた交流タイムでは、発表者を囲んで参加者が集まり、チャレンジについて踏み込んだ話をしたり、アイデアを出し合ったりと自由に情報交換しました。

「ハスカップファーム山口農園」の山口さんは「北海道ヒト大学」を立ち上げた髙木さんと意気投合。「インターンシップやボランティアで学生が地域に入ったとき、夕食を囲んだり、お風呂に一緒に入ったり、そういう余暇の時間にこそ地域の魅力にふれることができると思う」と髙木さん。「泊まれるようになったら、畑での作業だけじゃなく、一緒に何かを生み出したり、発信をしたり、可能性が広がりそう」と山口さんも期待を込めます。

教育活動に関心があると語っていた小林さんは教育委員会の斉藤烈さんと連絡先を交換。「けん玉をやりに行くと約束しました。一緒に何ができるのかは今のところ分からないけど、とにかく動いてみないと始まらないから。せっかくのチャンス。イベントだけの人間関係に終わらせないことが大事だと思うんです」。

参加者にも話を聞いてみました。

札幌の会社員・佐賀さんはまちづくりに興味があって「厚真ナイト」に参加しました。「厚真で面白い取り組みが行われていることはよく耳にしていましたが、厚真のみなさんの話を直接聞いてますます興味が湧きました。(中川さんの)植樹にも参加してみたいし、(山口さんの)農家民泊にも泊まってみたい。まずは厚真へ行ってみようと思います」。

北海道大学のボランティア団体「あるぼら」の立川さんは大学生のプレゼンに心打たれた様子。「同じ世代、同じ大学生なのに、地域に関わるだけじゃなく、ちゃんと活動を収益に結びつけていると聞いてすごいなって。たくさん刺激を受けました」と話します。

「厚真ナイト」の立ち上げで中心的な役割を担った実行委員の原祐二さん(厚真町観光協会)はこう語ります。「11名の発表者は分野も関心テーマもバラバラですが、それぞれにつながる要素はあると思ったし、実際ここから何かが生まれる予感がしています。若い人の発想と厚真の資源がどんな化学反応を起こすか楽しみです。厚真サイドとしては、個々が点と点でつながるだけじゃなく、せっかく来てもらうからには、あっちもこっちも面でつないでいけるような受け入れ態勢ができるよう準備したいですね」。

2時間に及んだ「厚真ナイト」は盛況のうちに幕を閉じました。はじめての試みにもかかわらず、(厚真の人たちの心配をよそに)多くの人が集まり、活発な交流がみられました。

なぜ、「厚真ナイト」は生まれたのか。後編では「厚真ナイト」の舞台裏をお届けします。



#ATSUMA