「厚真町ローカルベンチャー等推進事業」の「これまで」と「これから」
2022年3月14日
厚真町では2016年から「ローカルベンチャー等推進事業(以下、LV事業)」に取り組んでいます。この事業の目標の一つは「厚真町での『挑戦』の数を増やす」ことです。そのために、厚真町を選んで『挑戦』を始める人材である「起業型地域おこし協力隊」を募集し、起業という形での『挑戦』を増やすことを事業の中心に据え、「ローカルベンチャースクール(以下、LVS)運営事業」「基盤整備事業」「関係人口創出事業」「情報発信事業」の4事業を柱として連携させながら進めてきました。現在、その成果が少しずつですが表れ始めていますので、本事業の「これまで」と「これから」について紹介します。
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LV事業を構成する4つの柱
LV事業は以下の4つの取り組みが柱となります。
1.LVS運営…厚真町で起業もしくは新規事業の創出を目指す人材を募り選考する取り組み。
2.基盤整備…町民が起業や新規事業に対し興味を持ち、支援や関わりを持つといった文化を醸成するために、講演会や研修会等の開催を企画する取り組み。
3.関係人口創出…厚真町と何らかの繋がりを持ちたい、一緒に何かしたい等といった想いを持つ町外者を創出するための機会を企画・実行する取り組み。また、町が管理するコミュニティサイトを運営すること。
4.情報発信…厚真町のモノ・コト等をウェブサイトやSNS、町の広報誌等で発信し、厚真町に関心を持つきっかけを提供する取り組み。
LV事業の中心で起点となる取り組みは、LVSであり「起業型人材を町内に呼び込むこと」です。起業型人材を呼び込むには、厚真町を知ってもらうための「情報発信」が必要です。そして、いきなり地域に移住し起業することはハードルが高い場合もあることから、その入り口として継続的に厚真町に興味関心を持つ「関係人口の創出」。起業を望む人や興味関心のある人が、厚真町を訪れたときに実感する来訪者と「共に楽しむ雰囲気の醸成」。これらに総合的に取り組むことで相乗効果を発揮できるように、LV事業は4つの柱を組み合わせる形で構成されています。
LVS運営について
LVSとは「起業型」の地域おこし協力隊を選考します。厚真町で起業に挑戦する人材を募り、事業プランに加えその「本気と覚悟」を問うプログラムです。LVSの例年のスケジュールはおおよそ以下のようなものです。9月末、エントリー締め切り。11月上旬、書類審通過者による厚真町内での2泊3日の一次選考合宿。12月上旬、練り上げられたプレゼンテーションによる最終審査会で通過者を決定。4月に「起業型地域おこし協力隊」として着任します。
1次選考合宿では、最初に参加者は自らの事業プランをプレゼンテーションした後、質疑応答を行います。続いて事業経験が豊富でさまざまな経歴を持った「メンター(助言者)」と呼ばれる人たちと、事業内容・計画に関して個別面談(LVSでは「メンタリング」と呼んでいます)が行われます。参加者は合宿期間中に延べ10人ほどとのメンタリングを5時間程度経験します。メンター一人一人がそれぞれの知見から参加者のために伝える言葉は、その一つ一つが様々な角度から投げかけられるため、参加者にとって簡単に飲み込むことができないことも多く、「頭が真っ白になった」と話す参加者もいます。これらの面談に加えて「地域で活動するプレイヤーとしての心構え」、「より良いプレゼンテーションにするためのコツ」、「事業計画の考え方」といった「地域で起業していくために必要なこと」の講義も行われます。自らのプランの言語化・明確化、メンターからの思考のかき混ぜ、講義による知識の吸収。これらを短期間に集中的に行うことで参加者の意識は変わっていきます。そして最終日、あらためてプレゼンテーションを行い、審査が行われ一次通過者が決定します。
その後、最終審査会まで1か月ほどの時間がありますが、この期間にも意味があります。参加者の多くは厚真町外から来ます(町民の参加も可能です)。合宿参加の時点ではまだ厚真町に来た回数も少なく「厚真町のことを正確には知らない」場合も多いのです。そのため合宿時点での計画は「厚真町でこのようにできるのではないか?」との仮説が大きく混じったものとなります。この仮説を「厚真町できっとできる」と確信できるように、必要に応じてあらためて厚真町に足を運び、人に会い、厚真町の情報を集め、計画に織り込んでいく期間として、1か月ほどの時間を設けています。メンターは仮説の整理及び適切な人や情報にアクセスできるように、一次通過者を支援します。
このように事業計画を磨いた後に「この事業を厚真町でやりたい!」の気持ちを胸に秘め最終審査会のプレゼンテーションに臨みます。この日は他の話や講義もなく一発勝負の真剣勝負。ここをくぐり抜けた人がLVSの通過者として選定されます。
LVSのコンセプトは「植人」
LVSで起業型人材を募っていくにあたり、当初から継続するコンセプトがあります。それが「植人」です。地域で自らの夢を叶えたいと本気で願う人材を地域の中に「植えていく」。植樹が山に苗木を植えることであるように、植人とは夢の種をもった「苗人」を地域に植えていくことをイメージした造語です。夢の種を持った苗人を集め続ける。自分の想いを地域で実らせる人が増え、地域にさらに人が集まっていく。人が人を呼び、挑戦する人の周りに挑戦する人がさらに集まる。人を介した挑戦の連鎖によって、未来に実現される地域の活性化を想像しながら、LV事業に取り組んでいます。
また「ローカルベンチャー」という言葉は「移住者だけでなく町内在住者を含むすべての挑戦を始める人や企業」を表すと考えています。この定義に沿えば、昔からある企業も操業を始めたときはローカルベンチャーです。その後地域に根づき、長い時間を越えて今この町にある。そういった企業が新たなローカルベンチャーを励ますような温かな関係が、町のにぎわいや楽しさを増やしていく大事な基盤になると考えています。このように町内外、起業歴の長短を問わず、さまざまな挑戦の連鎖がこの町に生まれていく「きかっけ」としてLVSが機能することを願っています。
これまで過去5年(2016年度~2020年度)で、このLVSを通過しすでに厚真町に着任した「起業型地域おこし協力隊」は12人です。少しずつですがこの苗人たちの周りに次の挑戦者が集まってきており、「挑戦者を数を増やす」というコンセプトの最初の目標が実現し始めています。次のステップとしては「挑戦者とそれを応援する人とをつなげていくこと」です。そのためにもまずは厚真町の中で起こっている様々な挑戦を町民の皆さんに知らせする機会を増やし、実際に関わり、応援してもらえる機会を増やしていきたいと考えています。
地域の人により多くの挑戦を知ってもらうこと、町外からやってきての挑戦と地元からの挑戦が有機的につながることで厚真町はより活力のあるまちになると信じて、これからも本事業を推進していきます。
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