【地域おこし協力隊・農業支援員募集中】 農業に本気で挑戦したい人、集まれ! 「工夫次第」で叶う厚真町での新規就農の道。

2021年1月8日

厚真町では、3年の研修期間で農業の基本を学びながら就農準備ができる「地域おこし協力隊・農業支援員」などの制度を活用した新規就農希望者の育成支援を行っています。(詳しくは こちら

農業研修中の活動費用を助成するほか、農業担い手育成センターや研修農場での技術指導などサポート体制も充実。子育て世代でも安心してチャレンジできるような支援も整えています。

この制度を活用し、これまで8人が厚真町での新規就農を実現。現在も、農業に本気で挑戦する人を募集しています。

今回は研修の指導にあたる高橋亨さん、制度を活用して研修中の小林広和さん、農業の道を叶えた角地渉さんの3人に、移住から農業研修、就農準備の実際についてお話を聞きました。

自分の未来像を「整理する」農業研修

高橋さん(農業担い手育成センター指導員)

厚真町出身。JAとまこまい広域に38年間勤務。生産資材や営農指導(農業経営)等を担当した後、同農協厚真支所長に。実家は野菜や水稲、畑作物などを栽培する農家で、自身も兼業農家として農業に携わっていた。JAを退職後の2017年5月から指導員に。

-厚真町の農業の特徴を教えてください。

高橋:夏は涼しく、冬は雪が少なくて、町の中央地帯の「厚真」と海岸に近い「上厚真」という地区では夏の気温が2~3℃ほど違います。「厚真」は稲作、「上厚真」は酪農や畑作が中心です。メロンなどの単価の高い作物を作っている人もいて、他の作物と複合的に栽培する方が多いです。

-農業支援員の皆さんは、厚真地区と上厚真地区のどちらに就農することが多いでしょうか?

高橋:冷涼な気候の上厚真地区ですね。小規模でも高収益になるので、農業のスタートを切る上で良いと思います。稲作はある程度の広さの農地と各作業用の機械が必要で、それだけお金がかかります。もちろん、これまでには稲作での新規就農を実現した方もいますよ。

-研修プログラムは、どのような内容ですか?

高橋:1年目は、2〜3年目の支援員の先輩と共に基礎的な作業を学びます。研修農場ではホウレンソウやイチゴ、数品目の露地野菜を栽培しています。ホウレンソウは7棟のハウスで年間3〜4回作付けして収穫。露地栽培の品目はブロッコリー、かぼちゃ、アスパラ、ハスカップ、小豆・金時豆などを栽培し、研修しています。

-2〜3年目の支援員は後輩に技術や知識を教えることになるので鍛えられますね。

高橋:私たちも先輩たちに教えてもらってきましたからね。ハウスを建てたり解体したり。農機具の使い方、工具の使い方も覚えていくことになります。3年目のはじめくらいには就農地を決めて、就農準備に入ります。土地探しや必要な資材集めなどの準備は、就農支援担当者がサポートします。

冬は座学が中心です。現役農業者や指導農業士、支援員OBの体験談を聞いたりします。栽培技術に関しては、作物ごとの技術や土壌、肥料、病害虫などについて農業改良普及センター職員から学びます。

また、1年目の冬から毎年、営農計画を立てます。農業者は「何をどのくらい栽培して、10a当たりいくら儲かるのか」をシュミレーションします。例えばホウレンソウをハウス1棟で作った場合、200kg収穫できるとしますよね。単価が700円 /kgだとすると、1棟当たりの収入が見えます。そこから肥料などの資材費、人件費といった経費を差し引くと素収入(手取り)が分かります。自分の計画が現実的に経営として成り立たないのであれば、改善策を考えたり、栽培品目の見直しすることもできるわけです。

-高橋さんは支援員の描く農業経営の将来像に厳しい指摘やアドバイスをすることも…?

高橋:伝える時は率直に言います(笑)。

自分の思い描く農業経営をしてもらうのは全然構わないんです。ただ、農業経営について具体的に知ってもらい、その上で自分の夢に向かって進む方法を考えてもらうことが大切だと思っています。

-高橋さんが指導のなかで大切にしていることは何でしょうか?

高橋:機械作業による事故・ケガが起きないよう、安全性を確保することの大切さを伝えています。また、作物は種をまかないことには始まりません。ですから、まずは土壌を、種をまける状態にすること。最低限そこまで出来れば、あとは色々な人に相談できますから。

今までも、これからも、「土づくり」の大切さをよく理解してもらうよう指導していきたいと思います。

ホームセンターに行けばポット苗が売っているので簡単に育てられるイメージがあるかもしれませんが、土壌が悪いと良い作物が育たないこともあるのは驚きかもしれませんね。

高橋:今年は、露地の小豆がなかなか芽が出てくれないことを経験しました。雨が少なく、土壌に水分が十分になかったので。その年の天候によってさまざまなトラブルがあるんですよ。ですから3年間の研修だけでは全てを学びきれないし、もちろん失敗することもあります。

-きっと最初に失敗しておくのは良いことですよね。

高橋:支援員が一生懸命管理をしても、天候や気温で作物がうまく取れないこともあります。技術だけでなく、天候なども含めて3年間で得た体験、失敗を就農に活かしてもらえたら良いと思います。

就農に向けて研修真っ盛り!美容師から農家の道へ

小林広和さん

札幌市出身。20歳まで札幌市で生活し、東京都で15年間美容師として働く。2019年3月末に厚真町へ移住。地域おこし協力隊制度を活用し、支援員2年目として農業研修中。妻と子供の6人暮らし。

-小林さんが農業を職業にしようと思ったのは、いつのことでしたか?

小林:29歳で結婚して子供が生まれたんですが、その頃から農家の道を考えていました。僕も妻も子供も食物アレルギー体質だったので、食べ物を作ること、作物を生産することに興味があったんですよね。埼玉県で暮らしていた時は、オーガニック農家さんの手伝いをしたこともあります。

その後も6〜7年間は美容師として働いていましたが、自分が思い描いていた美容師としての目標を全て達成できたので、次のステップに進もうと決意しました。その間、美容師として独立しようか考えたこともありましたが、長い将来を考えた時に「あと何年美容師の仕事ができるだろう」と思って。ただ美容師の仕事も好きなので、移住後もお客さんの髪を切っています。妻も美容師なので、農業を中心に時々髪の毛を切るのも悪くないかなと。

-就農地として厚真町を選んだのはなぜでしょう?

小林:当初は埼玉県内で就農しようと考えていましたが、北海道に戻ることを考えて道内で場所を探してみたんです。その時に厚真町を知りました。インターネットで情報収集して、農業フェアにも行きました。

厚真町は雪かきが少なくてすむことと、空港が近いところが魅力でした。東京はユニークな人たちが集まる場所なので、つながりを残して将来的には厚真と東京を行き来したいとも考えています。それに、厚真町は移住や就農までのサポートが充実していたので。最終的には、妻が希望していた若い人たちが多い町であることが決め手になりました。

僕はオーガニックで農業をやりたいという希望はあったけれど、移住前は実際に何を作りたいかまでは決められなかったんですよね。厚真町はホウレンソウやイチゴの栽培を勧めてはいますが、何を作っても良いところが就農地として選ぶポイントになりました。経営さえしっかりしていれば、何を作っても良い。自由度が高い地域だと思います。

オーガニック農業の夢を叶えるために

-小林さんは支援員2年目として、今まさに研修中とのことですが。

小林:イチゴで就農すると決めてから、ハウス用の資材を集めたり具体的に動き始めています。今年(2020年)の2月からは町内のイチゴ農家さんで研修しています。農家研修では経営的なことも含め、農業の1年のスケジュールや農家の1日の流れなどの感覚が分かってきました。

-当初はオーガニック農業での就農を目指していたそうですが、進路を変更したのですか?

小林:順番が分かったので、そこに向けて計画を立て直したという感じです。オーガニックを諦めるわけじゃなくて、お金になることをまずやって、そこから自分の夢や目標に向かって行けばいいんだと。厚真町に来る前はオーガニックで生計を立てる夢だけを追っかけていたけれど、家族があるから順番を変えようと僕なりに考えました。

-いったん整理されたという感じですね。移住と就農のために貯蓄はしていましたか?

小林:埼玉に家を買って2年で移住したので、貯金はあまりなくて。それでも、厚真町は生活していける制度がありました。厚真町の地域おこし協力隊・農業支援員制度は雇用制ではないので、週に5日間研修に出れば他の日は別の仕事をしてもいいんですよ。僕は町外の美容室からの業務委託で、前職の経験を生かしています。協力隊制度で毎月の活動費が助成され、プラス自分の稼ぎを貯蓄に回せるのは助かっています。

生活するための「仕事」として選んだ農業

角地 渉さん

東京都出身。前職は内装業(自営業)。妻の出身である北海道への生活を求めて、2015年に厚真町へ移住。地域おこし協力隊制度を活用して3年間の研修を受け、2019年春に就農。就農2年目の現在は、ハウス10棟でホウレンソウを栽培。妻と子供の4人暮らし。

-角地さんは、どうして農業を仕事にしようと思ったんですか?

角地:僕の場合は、移住への思いが最初にありました。子供が小さいうちに東京以外で暮らしたいと思っていて。妻が北海道出身だったことから、まずは北海道への移住を決めました。前職は自営で内装業をしていたので同じ仕事を続けることも考えましたが、東京と北海道の単価を比べたときにモチベーションを持ち続けていけるかが不安でした。それならいっそのこと、地方らしい仕事をしようと。

-移住先は厚真町以外も検討されましたか?

角地:札幌市に住んでも良かったんですが、せっかく地方に来るのに都市部から都市部に移動するっていうのも面白くないですし(笑)。雪の問題もあったので太平洋側で探したところ、金銭面でも一番サポートが受けられるのが厚真町でした。妻の実家に遊びに行くときに厚真町役場に足を運んで、地域おこし協力隊制度の応募方法を聞きました。そのときに役場の方から「新規就農するならホウレンソウ」とジャブを打たれて(笑)。

「新規就農はホウレンソウ」と言われて、違う作物を作りたいなとは思いませんでしたか?

角地:農業についての勉強は全くしていなかったし、好き嫌いもないので「これが作りたい!」というのは特にありませんでした。自分にとっては夢を持って農業というよりも、「生活するための農業」。純粋に職業として選んだ感じです。実際にホウレンソウは挑戦しやすいと思います。収穫してすぐお金になるから。まとまった蓄えがなくても、きちんと栽培できればお金が回っていくと思います。うちは子供がいるので、コンスタントな収入が必要でした。研修を始めて、実際にホウレンソウ栽培を頑張っている先輩たちに出会って話を聞いていくうちに、これだなと確信しました。

就農成功の秘訣は縁拾い?

角地さんの場合は、どんな研修だったんですか?

角地:僕が厚真町に移住したときは研修農場がまだなかったので、町内農家さんでの実習がメインでした。1年目にさまざまなタイプの農家さんを回り、2年目に「ホウレンソウとピメントを作ろう」と決めました。ホウレンソウを作るにはビニールハウスが必要ですが、もし上手く収穫できなかったり、違うものを作りたくなったらどうしようかとも考えて。そこでビニールハウスでは他にどんな作物が栽培できるかを知ろうと思い、色々な作物も見せてもらいました。そして、実際に町内にホウレンソウとピメントを作っている農家さんが1軒だけいたので、研修の受け入れをお願いしました。

農地はいつ頃見つかりましたか?

角地:2年目の秋ですね。持ち主がお亡くなりになって本来ならご家族が相続するところ、家は必要ないので引き取ってくれる人を探していたらしいんですよ。農地は法律上の問題で簡単には譲れないので、役場から研修農場に話が行き、そこから自分に連絡が入りました。


実は、農地はめちゃめちゃ探しました! もう、みんなに「俺、ホウレンソウやるんだ」って話をして(笑)。結構こだわって選んでいましたが、現在のところを紹介されたときに家付きの農地は他にアテがなくて。これ以上選んでも準備が遅れてしまうので、この場所で勝負しようと決めました。

土地探しで苦労するというお話はよく聞きますよね。そういった縁をキャッチするコツはありますか?

角地:そうですねぇ…。僕は、とにかくうるさいくらい色々な人に話をしていましたね。もしかしたら「あいつ、うるさいから嫌い」って人もいるかもしれない(笑)。自分が何をしたいかを人に明確に伝えることって、すごく大事だと思う。それに、向こうから根掘り葉掘り聞いてくることは少ないですよね。作るものと必要な面積、土地条件といった具体的な部分を、会った人全員に話すことが大切だと思います。

制度と研修時代の人付き合いで就農を実現

就農や移住で役に立った制度はありましたか?

角地:子育てする環境は良いと思います。認定こども園や子育て支援センターがあったり、保育料や医療費が還元されたり。妻と2人で農作業をしているので、作業中に子供を預かってもらえるのは助かっています。

お子さんが小さくても、安心して就農できるんですね。土地探し以外にどんな準備が必要ですか?


角地:ホウレンソウの場合は、ビニールハウスとトラクター、農薬をまく機械などを探しました。農家研修中に自分の経営に必要・不必要な物を考えました。お金があれば全部新品でもいいですが、最初は難しいと思います。僕の場合は全部知り合いの農家さんから購入しました。今は研修農場に情報が集まるようになっているので、準備もしやすくなっているんじゃないかな。

就農のための資金は、どのように準備しましたか?

角地:就農するタイミングで受けられる「厚真町担い手育成夢資金」や「新規就農者支援対策事業」などを活用しました。厚真町だと、合計で最大390万円ほど。お金があればよりスムーズだけど、なくても就農している人は多いと思います。逆に僕は、それほど潤沢ではなかったから周りに助けてもらった気がします。農家さんに事前に資材を買ってもらったこともありましたね。「農業者になったら返してもらうから」って言ってくれて。その資材分は今年、返済できました。

潤沢に貯蓄があるから就農できるのではなく、工夫次第で何とかなる証明ですよね。支払いを待ってくれた農家さんは、角地さんが返済できるまでに成長したことが嬉しかったんじゃないでしょうか?

角地:そうかもしれませんね。農業支援員の先輩たちが、とても優秀な農家になった人ばかりなんですよ。だから先輩が育ててくれた信頼もあると思っていて。伝統ではないんですが、その信頼の流れを止めちゃいけないと思っています。それから、支援員時代は集落アドバイザー(現在の指導員)と農家さんへ行って場を繋いでもらった後、そのまま勉強させてもらいました。信用してもらうために気を遣いましたけど、僕が会った人たちはとても良くしてくれましたし、そのときのコミュニケーションが就農後もとても生きていると感じています。

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工夫次第で自分らしい「生き方」を追求できる農業。就農は決して楽な道のりではありませんが、目標や夢、「なりたい未来」に向かって突き進む小林さんと角地さんの充実した笑顔が印象的でした。

厚真町では、地域おこし協力隊・農業支援員を随時募集中です。本気で農業を目指すなら、厚真町に来てみませんか?

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