起業の夢が叶う町にしたい
2017年12月19日
日本各地から新天地を求めて海を渡って来た人びとによる開拓が厚真で始まったのは明治初頭。それから約150年が経った今、厚真町は再び、希望を胸に抱いて町内で起業する「次世代開拓民」を応援することを決意しました。資金・育成・立地推進の3つの側面から起業家を支援する事業をスタートします!
このプロジェクトでは、道なき道へと踏み出すチャレンジャーを支えるため、みなさまからのご寄付を活用します。
みんなの応援で起業家を育てるまちへ
「やりたいことを叶えている人が集まるまちには、ワクワクするようなモノやコトがあふれています」。
熱を帯びた口調でそう話すのは、「あつま次世代開拓民育成プロジェクト」のリーダー・宮さん。
「一つの目標としているのは、イギリスにあるトットネスという小さなまち。ここは『トランジションタウン』と呼ばれる市民発の地域循環型エコタウンが確立し、市民が主体となって地域をつくる活動が活発に行われています。その一つがビジネスグループです。起業したい人が集まって地域住民の前で事業プランをプレゼンし、それを聞いた市民が『これは有望だ』と思う起業家を選ぶんです。そのときにみんな面白がって意見を出し合ったり、おひねりをあげたりして起業家を応援するんですね。こういうの、あったかいですよね。みんなが楽しみながら企業のスタートアップを手伝う。応援してくれる人たちがいるから起業家が集まる。結果的にまちが豊かになる。厚真町もそんなふうになったらいいなって思うんです」。
このため厚真町では3つの起業支援事業を行っています。一つは資金面でフォローする「起業化支援事業」、一つは事業プランのアドバイスなどを行う「起業家人材育成事業」、そして最後はサテライトオフィスの管理運営やオフィスを斡旋する「企業立地推進事業」です。それぞれについて宮さんに聞きました。
起業家支援事業がまちと人の可能性を発掘!
起業家支援事業は平成25(2013)年度にスタートしました。町内で新規に事業を開始する人などを対象に、空き店舗を活用する場合は最大250万円、活用しない場合は最大200万円の補助が受けられます(農業は対象外)。
事業開始から現在までの約5年間で16件が採択され、町内で実際に起業を果たしました。具体的にはカフェ、居酒屋、パン屋さんをはじめ、WEBデザイナー、革細工職人、さらには自家栽培したハスカップの加工品を売る移動販売車、米粉を使ったスイーツ店など、厚真町ならではの産品を提供する事業者もいます。
「金額の多寡でいえば、決して他市町村より優れているというわけではない」と宮さんはいいますが、スタートアップでまず何よりも必要なのは経営が安定するまでの資金です。16件のうち、現在までに倒産・廃業した事業者は「ゼロ」という事実が、その効果を端的に表しています。
「起業家支援事業を始めて驚いたのは、想像していた以上に女性のエントリーが多かったことです。子育てがちょっと落ち着き、それを機に自分の得意なことを生かして起業した方というのが実は多いんです。もしこの制度が、ある意味で眠っていた可能性を掘り起こし、彼女たちの背中を押すきっかけになっていたのだとしたら、事業を進めてきた意義もあるのでは、と思います」。
ローカルベンチャースクールで起業家を育成
厚真町が経済的支援と同様に力を入れるのが「起業家人材育成事業」です。
この事業では、厚真町での起業を志望する町内外の方に向けて教育的な側面から事業展開のための基盤づくりを支援します。その代表的なプロジェクトが厚真町ローカルベンチャースクール(以下、LVS)です。
LVSは、地域を拠点として起業や新規事業立ち上げをする人を対象にしたプログラムです。選考会をへて事業プランが採択されると、地域おこし協力隊や厚真町独自の起業支援制度を活用し、町のバックアップを受けながら起業の準備を進めることができます。
LVSの枠組みは岡山県西粟倉村で先行して立ち上がり、厚真町では昨年(2016年)初めて募集を行い、地域おこし協力隊として2名を採択しました。採択された一人は馬搬(ばはん)という伝統的な林業技術の継承に挑む林業家で、もう一人は個人貿易業を営みながら町内でグランピングなどの新規事業を軌道に乗せるため邁進中です。加えて、地域おこし企業人としも1名採択し、現在はふるさと納税やハスカップの活用等に携わっています。
さてLVSの大きな特徴は、選考会の段階から町内外の「メンター(助言者)」が付いて事業プランの磨き上げを行うことにあります。特に町外メンターはいくつもの企業のスタートアップや新規事業をフォローしてきた“最強”のメンバーが集められ、事業計画を客観的に評価し、アドバイスを行います。
「もちろん厚真町の地理的環境や経済情勢、人間関係に詳しい町民のアドバイスは有効ですが、厚真町とは利害関係のない町外の方が持っている情報や感覚は、セカンドオピニオンとして非常に価値があります。いくつもの企業の立ち上げを手がけてきたプロフェッショナルの意見を伺えるというのは、起業をめざす方にとっては絶好の機会ですし、町にとっても大きな資産となります。そうした知見を蓄積していくことで、厚真町に起業家を育む土壌が生まれ、地域の起業を促すゆりかごになるんだろうと思います。人材育成事業はある意味で起業家のためのインフラ整備なんですよ」。
LVSは昨年度に続いて今年も募集が行われました。
「選考会では今年度のエントリー者と一期生との交流も見られました。これから厚真町で起業を考える人にとって、一年先を歩いている“先輩”は格好のロールモデルですし、またビジネスパートナーとなりうる可能性を大いに持っています。3年目、4年目と回を重ねるごとにLVS参加者のネットワークは拡大し、移住者や起業希望者が集まりやすいまちになっていくのでしょう。続けていくことに意味がある。続けた先の未来が楽しみなプロジェクトですよね」。
ニーズに応じた3段階のオフィスを用意
「起業家支援事業」「起業家人材育成事業」が、次世代開拓民に鍬(くわ)や鋤(すき)を与える事業だとすれば、彼らに大地を提供するのが「企業立地推進事業」です。
宮さんによれば「企業立地推進事業」はホップ・ステップ・ジャンプの3段階を準備しているといいます。
“ホップ”に当たるのが、現在2棟稼働している「お試しサテライトオフィス」です。建物はオフィススペースと住居スペースからなり、仕事用デスクのほかに、キッチン、シャワールーム、ベッドなど生活に必要な家具・家電が用意され、Wi-Fiも完備しています。利用できる期間は最長1ヵ月間で、利用料金は1週間5500円(冬期間7600円)と格安。レンタカーの利用補助も受けられます。厚真町で起業を望む人が町内でのフィールドワークの際に活用したり、テレワークを考える起業が試験的に利用するなど、短期での滞在に適しています。
“ステップ”は、現在整備が進む「シェアサテライトオフィス」です(2018年2月供用開始予定)。この施設は、旧宮の森保育園の建物を活用し、シェアオフィス(3室)、個人事業主向けコワーキングスペース兼イベントスペース、会議スペース、休憩スペースを備えます。利用期間は半年、1年、3年といったスパンを想定し、企業のスタートアップや、厚真町に少しの間腰を据えて仕事をするという企業に適しています。
”ジャンプ”となるのがオフィススペースの斡旋です。現在、厚真町の管理する遊休施設をオフィスとして貸し出すことを検討します。企業がテレワークのために借り上げたり、事業規模によっては本社そのものを厚真町に移転することも可能となるでしょう。
起業家が集まるまち、それを応援する人が集まるまちへ
「人が集まるまちには、面白い人がいます。面白いビジネス、面白いサービス、面白いお店、面白い森、面白い畑……。やりたいことを叶えている人が集まるまちには、ワクワクするようなモノやコトがあふれていて、それがまた面白い人を集めると思うんです。だから、やりたいことを叶えている人というのはまちにとっての宝です。
チャレンジャーの成功が新しいチャレンジャーを呼ぶ。そういう渦(うず)を厚真町に起こしていきたい。
ふるさと納税のご寄付を通じて起業家を育てることが、未来の厚真を育てます。寄付者の方々には、厚真を育てることを一緒に楽しんでほしいです」
厚真町で次世代開拓民の渦が巻き起こるのをぜひ応援してください!