りんごたっぷり、こだわりの手作りアップルパイを届けたい―「森のパイ工房」森 恵子さんのセカンドライフの挑戦―

2024年9月13日

「自分が思う理想のアップルパイをいろんな人に食べてもらいたい!」北海道厚真町でそんな夢が動き出しています。夢の持ち主は町内在住の森恵子さん。長年理想のアップルパイを研究し、定年退職を機に販売を決意。りんごのような真っ赤なキッチンカーで町内外のイベントに出店する森さんに、アップルパイへのこだわりや販売までの道のり、そしてこれからの夢についてお伺いしました。

森 恵子さん
厚真町在住。23歳の時、岩手県から安平町にある牧場で実習するために単身で北海道に。実習期間中に夫と出会い、結婚、出産。その後、夫が子どもの頃に住んでいた厚真町へ移住。実習に来た安平町の牧場で経理の仕事を続け、2022年に定年退職。「森のパイ工房」を起業し、2024年4月よりキッチンカーでアップルパイの販売を開始。

自分が本当に美味しいと思う、理想のアップルパイを追求

―前職は経理事務でアップルパイとは無関係のようですが、森さんがアップルパイを作り始めたきっかけを教えてください。

森:生まれは青森県なので、りんごになじみはありましたが、アップルパイはあまり食べたことがありませんでした。子育てが一段落した頃から、ふと「アップルパイ、おいしいなぁ」って自分の中で引っかかるようになってきて、気がついたら目に留まるたびに買って食べるようになっていました。10年くらい前からだんだんと研究するようになってきて、雑誌に美味しそうな各地のアップルパイが載っているのを見つけては取り寄せて食べました。パイの生地と中身の量のバランスや、りんごの味づけなどいろんなアップルパイを食べ比べしましたが、どうしても自分が満足するアップルパイにはたどり着かなくて。「もうこれは自分で作るしかないね」と娘に話して、5年ほど前から自分で作り始めました。

―森さんの理想のアップルパイとはズバリ、どんなものですか?

森:シナモンが効きすぎず、りんご本来の甘さや食感が感じられる煮たりんごだけがたっぷり入っていて、表面は溶き卵だけを塗って焼き上げたものです。ちゃんと一口目からりんごがしっかり味わえて、最後までリンゴとパイを一緒に食べられるのが理想です。アップルパイを食べてりんごが少なかったら悲しいですよね。

―どのように理想のアップルパイ作りの研究を進めたのですか?

森:りんごを煮る時の材料の配合や煮る時間の試行錯誤を何度も繰り返しました。それでようやく3年ほど前に「これだね」という味にたどり着いて、娘も「いいんじゃない!」と言ってくれました。詳しいことは企業秘密ですが、配合が決まったといっても、いつも同じ分量ではなく、毎回りんごの糖度を測って同じ味になるように調整しています。形はコロナの影響もあり、個包装で提供できるよう今の形にしていますが、将来的にはホールもできないかと研究を続けています。

「こだわりはりんごの味と量」端から端までりんごがたっぷりで一口目からりんごの味が口いっぱいに広がる。りんごの形がほどよく残っていて、ほんのりシナモンが香る、飽きがこない軽やかな口当たり。りんごの品種は主に「ふじ」を使用。

―ご家族も太鼓判のアップルパイですが、これを販売しようと思ったきっかけは?

森:アップルパイを食べた友達の一人が「森さん、これ売れるんじゃない?」と言ってくれたことが、今まで自分が研究して考えてやってきたことが間違いじゃなかった!という自信になりました。それで「じゃあ、定年になったらちゃんとやってみるか!」と思って、現在に至ります。一生懸命味見をしてくれた娘に「お母さん、このアップルパイを売ってみたいんだよね」と言ったらすぐに応援してくれましたし、励みになりました。

ご自宅の庭園でアップルパイについて熱く語る森さん。23歳で単身北海道に実習に来るなど、好奇心が旺盛で行動力があり、家族思いで粘り強い性格もうかがえる。

真っ赤なキッチンカーで広まる森さんの手作りアップルパイ

―森さんのキッチンカーはりんごのような真っ赤な色でアップルパイの販売にぴったりですね。

森:中古のキッチンカーを探してほしいと町内の業者さんに頼んでいたら、ちょうど真っ赤なキッチンカーが来たんです。ほとんど新車に近くて状態も良かったので、即決しました。運が良かったですね。夫の弟がデザイナーで、ロゴやアップルパイの文字をデザインしてくれたので、シールにして家族で協力してキッチンカーに貼ったり、内装を夫が整えてくれたり、周囲の協力があって販売できる状態になりました。

森さんのキッチンカー。真っ赤な色が目立つ。キッチンカーの中にはアップルパイが焼けるようガスオーブンが備えられている。

「森のパイ工房」のロゴには町外の人にどこから来たか分かるように「From ATSUMA」の文字も。ロゴには以前森さんが飼っていた犬やご自宅によく現れるというエゾシカが描かれているので、買いに来た際に探してみるのも楽しい。

―販売を始めてからたくさんのイベントに出店してきたと思いますが、お客さまの反響はいかがですか?

森:「りんごたっぷりで美味しい」と言ってくださるので嬉しいです。WEBの高評価レビューを見て「気になっていました」と買いにきてくださった方もいました。町内のイベントに出始めて町内で興味を持ってくれた方はだいたい購入されたと思うので、これからリピートしてもらえるかが大事ですね。

―今年のあつま田舎祭り(※)にも二日間にわたり出店されていましたね。

森:あつま田舎祭りはとにかく準備が大変でしたが、当日朝5時に夫と息子が起きてきて、「手伝おうか」と言ってくれました。正直驚きましたが、二人のおかげで準備も間に合って、田舎祭りでは過去最高の個数を販売することができました。それでも早々に完売してしまったのは申し訳なかったですが、来年作戦を練ってまた出店したいと思います。
※あつま田舎祭り…毎年6月に行われる厚真町最大のお祭り。

―これまでのお話を聞くと、ご家族のご協力も大きな力になっていますね。

森:そうですね。夫はキッチンカーの運転や販売も手伝ってくれるのですが、いつもニコニコ楽しそうでとても助かります。大変で諦めそうになる時も「待て待て、娘が楽しみにしているんだから頑張らなくちゃ!」と思うと乗り越えられますし、応援してくれる家族の力は大きいです。

―体力的に大変な日々を過ごされていると思いますが、どんなことがモチベーションになっていますか?

森:有難いことに完売して今日もちゃんと売れたということが励みになって、また次のイベントに向けて頑張ろうと思えます。少しゆっくりしていても予約の電話が入ると、自分の中でスイッチが入って「やらなくちゃ」となりますし、ちゃんと美味しいものを作ってお客さまの期待に応えていきたいですね。
また、イベント出店するようになって、厚真町に若い方々が集まってきていてキッチンカーやテント販売をしていることを知りました。「厚真町、活気づいているじゃん!」と嬉しくなったので、自分もその一役を担えればと思います。

キッチンカーで販売をする森さん。声をかけてもらったところにはなるべく出店するようにしているとのこと。毎回数量限定のため、売り切れる前に買いに走りたい。

―「森のパイ工房」の今後の展開についてぜひ教えてください。

森:秋に厚真産のかぼちゃを使ったかぼちゃパイの販売を考えています。アップルパイとかぼちゃパイは甘さが違うので、2つ同時に食べる時はかぼちゃパイから食べてもらいたいです。あと、町内はもちろん、町外での出店も積極的にしていきたいですね。今年できなかったことはまた来年挑戦していきたいと思います。無理せず少しずつ進んでいって、70歳までに販売メニューを取り揃えて、80歳まで元気に販売を続けていきたいですね。

―ありがとうございました。これからも体に気を付けて、美味しいアップルパイを作り続けてくださいね。

「森のパイ工房」のアップルパイは予約販売も受け付けています。こちらは受取時間に合わせて焼くため、焼きたてのアップルパイが楽しめるとのこと。ぜひ一度、焼きたてのアップルパイを味わってみてはいかがでしょうか。

〇最新の出店情報などはこちらから
https://www.facebook.com/morinopiekoubouhttps://www.facebook.com/morinopiekoubou

〇予約販売のお申込みはこちらから
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdAehayim776YPtZyXyuhxYSJYQQiVpv8j0eb65VCCkJuEThA/viewform



#ATSUMA