厚真町の中心部にある「まちなか交流館 しゃべーる」は、コミュニティ・カフェ、多世代交流スペース、バス待合所、就労継続支援B型事業所が一体となった複合型施設です。入ってすぐのバス待合所でおしゃべりに花を咲かせるお年寄り、カフェスペースではランチを食べるサラリーマン、豆腐を買いに来るご近所さんの姿もあります。学校が終わると、ソフトクリームを目当てに子どもたちが集まることも。さまざまな世代の人たちが、入れ替わり立ち替わり訪れるこの空間には、いろいろなものを包み込む不思議な居心地の良さがあります。

ここのカフェスペースの奥には豆腐製造工場があり、デイワーク「里工房 ほっとす」を利用する3名の障がいのある方が働いています。
本プロジェクトでは、この施設の運営を支え、年齢や性別、障がいの有無に関わらず誰もが活躍できるまちづくりのためにみなさまからのご寄附を活用します。

北海道ナンバーワンに輝いた豆腐。その作り手は。

2017年に行われた北海道豆腐品評会。その充填豆腐部門にて、デイワーク「里工房 ほっとす」が製造する「雪ほたる プレーン」が、見事金賞に輝きました。さらに木綿豆腐部門では「雪ほたる もめん」が銅賞を受賞。初出品で二つの快挙を成し遂げました。

「雪ほたる」の何が評価されたのでしょうか。その秘密は、おからが出ない特殊な製法にあります。原料は厚真町産大豆ユキホマレ100%。これを粉末加工し、水を加えて豆乳を作り、にがりで固めます。大豆をあますことなく使うことで大豆の食物繊維や栄養分をまるごと含み、濃厚な味わいに仕上がります。「一度試したらほかの豆腐が食べられなくなった」という熱烈なファンもいるほど。
そんな豆腐の作り手こそ、一般企業では受け入れの難しい障がいのある人たち。彼らが「職人」となって豆腐づくりに励んでいるのです。

働く場所ができたことで、家から一歩出て社会とつながることができた。

「まちなか交流館 しゃべーる」が誕生したのは2015年4月。「中心市街地の空き店舗の活用がそもそものスタートだった」と金澤さんは振り返ります。
町が活用手段を模索していたところ「障がいのある人が学校を卒業したあとに居られる場所が、町内にはほとんどない」という声が聞かれ、就労継続支援B型事業所を開設する計画が進められました。

就労継続支援事業にはA型とB型があります。B型は、A型よりも一般の事業所で働くことがさらに困難な方が利用される施設です。
町内にはこれまで障がいのある人が入所して生活をする厚真リハビリセンターはあったものの、「障がいのある人が働く」ための施設はありませんでした。そのため一般企業で働けない障がいのある人は、町外の施設を利用するか、自宅などで過ごすしかありませんでした。デイワーク「里工房 ほっとす」ができたことで、身近に働く場が生まれ、家から出て社会参加することができるようになったのです。

デイワーク「里工房 ほっとす」では、毎日80個前後の豆腐を製造しています。豆乳を作るための工程やにがりを混ぜるといった商品の肝となる作業は職業指導員と生活支援員が行い、3名の利用者は材料の撹拌や器具の洗浄などの製造サポートを行います。

利用者の方が作業を覚えるまでには時間がかかりますが、丁寧な仕事ぶりでコツコツと一つひとつの作業をこなしていきます。

「里工房 ほっとす」の管理者兼サービス管理責任者を務める永田晴己さんは「働くうちに利用者さんにも変化が見られるようになった」といいます。
「利用を始めたばかりの頃は皆さん緊張されていることが多いですが、作業に慣れていくにつれて自分から話をしたり、笑顔を見せたりするようになりました。工場内から売場へ出てこられるようになった利用者さんもいます。『豆腐がたくさん売れたよ』と聞けばうれしそうに笑います。自分が関わったものが評価されたとなれば、やっぱりやりがいにつながりますよね」。

目標は「1日1回の笑顔」。ゆるゆると、自然体がいい。

「国は、障がいのある人の自立支援のためには目標の設定が必要だと指導しています。それに従い、私たちも利用者それぞれに長期・短期の到達目標を設定しています。でも、それよりも大事なのは、働くことを楽しく感じ、ここに来ることで愉快な気持ちになれることだと思っています。利用者と日々接していると、年齢とともに体力や気力が低下する中で『今できること』を維持し続けるのが、どれほど大変なことであるのかを痛感します。シビアな到達目標を課すのではなく、まずはずっと健康で、社会と関わり続けられる“今日”を大切にしたい。『1日1回の笑顔』。私にとってはそれが一番の目標です」と永田さんは言います。

「障がいのある人の活躍できる場所が身近に存在することで、期待される効果は数多くあります」と金澤さんは話します。
「まずは、障がいのある人が『働きたい』という前向きな気持ちを持てるようになること。また、社会参加を通じて『生きがい』を感じることができるようになることです。そして、多世代が集まる空間に障がいのある人の活躍の場があることで、地域の方々の目が少しでも福祉に向いてくれたら、町全体にとっても意味があります」。
「里工房 ほっとす」の作業場を壁でふさいでしまわずに、あえて作業風景が見えるようガラス張りにしたのも、障がいのある人と地域に住む人びととの心理的な距離を近づけたかったから。
「人間には誰だって大なり小なりハンディキャップがあるものです。それがたまたま今の社会の中で生きづらい種類のハンディキャップを抱えてしまった人が障がい者と呼ばれているだけなのだと私は思います。そうした方々がごく自然に、生きがいを持って生活していける環境を整えることが私たち行政の役割ですし、福祉の本質なのだと思います」金澤さんの穏やかな語り口にも熱がこもります。

一歩ずつ地道に。だけど、確実に前へ。

将来のことを考えて、「里工房 ほっとす」に実習に来られる若い方もいます。
永田さんは言います。「働くということに慣れるまでには時間もかかるでしょう。利用者さん一人ひとりの仕事をしたいという気持ちをいかに低下させることなく、モチベーションを維持し続けられるか。こればかりは近道がなく、地道に積み上げていくしかないですね」。

金澤さんが続けます。「施設を維持・管理していくにはどうしてもコストがかかります。みなさんのご支援によってこの環境が保たれ、障がいのある人が安心して仕事に従事でき、まちの人や町外からの観光客がしゃべーるに気軽に訪ねてくることができます。それを一日でも長く継続していくことが、この施設の価値になります。現在事業所を利用されている方、今後利用する可能性のある方のためにも、私たちの考えにご賛同いただけたら幸いです」。

障がい者福祉には多くの「支え」が必要です。永田さんのように直接支える方法もあれば、金澤さんのように環境整備という形でバックアップする方法もあるでしょう。そして、そんな方々を資金面で応援することもまた一つの「支え方」であるように思います。

「誰もが主役のあつま福祉プロジェクト」でお預かりした寄附金は、「まちなか交流館 しゃべーる」の運営費として活用いたします。
誰もが活躍できる地域のあり方をめざす厚真町の取り組みに、ぜひご支援ください。



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