【協働型人材募集!】林業から製材・加工、そして販売まで。起業当初から変わらぬ想い。「自らの手で木の全てに関われる仕事」の魅力とその可能性。

2023年10月12日

中川さんは2018年度のローカルベンチャースクール(以下、LVS)で、「自らが思い描く林業を実現させる」と発表し採択されました。それから5年目になる今年(2023年)、待望の「製材工場」が竣工。あのとき“想い”でしかなかったものは、少しずつ、確実に他の人の目にも見えるカタチになってきました。そしてこのタイミングでこの事業を一緒に進めていく「協働型人材」を採用することに。採用にあたっては「地域おこし協力隊」制度を活用します。本記事では中川さんの事業の内容と協働型人材として求める人材像をお伝えするとともに、厚真町の「協働型地域おこし協力隊制度」についても説明します。

中川さんの人となりや考え方を知るために、下記の2つの記事もぜひご覧ください。

中川さんがLVSに参加したときの記事

https://atsuma-note.jp/lvs2018final/

中川さんが地域おこし協力隊として3年の任期を終えたときの記事

https://atsuma-note.jp/nakagawa-takayuki/

「全部やる」。分業の垣根を越えて木に関わる仕事

――協働型人材の募集にあたり、まずはどのような仕事内容になるか教えてください。

中川:自分と一緒に「全部をする人」ですね。木を植え、下草刈りをしたりの 山仕事が1年のうち3~4か月ほど。そして丸太から板にする一次加工(製材)と板からフローリングなどの製品にする二次加工(木材加工)。お客さんへの販売もします。普通なら分業しますよね。でも、全部やって欲しい、全部やれる人になって欲しいなと思っています。最初から最後までひと通りやれる(伐採・搬出は林業事業者に任せている)のがうちの仕事の特徴だと思うし。

植林のため仲間とともに山に入る中川さん(一番後ろ)

――その「特徴」をもう少し詳しく教えてください。

中川:林業業界って木を伐るところから最後製品になってお客さんに届くまでが細かく分業になっていて、各工程が分断されてるんですよね。例えば、製材するなら林業屋さんに「これこれの木をトラック〇台分持ってきて」と発注することで丸太の仕入れを済ませるのが普通です。その木がどこでどんな風に育っていたかとか全くわからないし、知る必要もない。

でも、自分は実際に植林などで山にも行っているし、木を伐る仲間も近くにいるから「いい木があるんだけど、ちょっともったいない使われ方になりそうなんだ」なんて話が入ってくる。そうしたらそれを引き取ってくる。そうしないとせっかくいい木があってもチップにされて燃料やパルプになって、その木を十分に活かしきれないことになる。そこは単純にチップにすることが悪いということではなくて、そうすることの効率がいいっていう側面があるから。でも、自分は林業現場で働いてきた経験があってもう少しどうにかしたいし、できる余地があると思って起業したから、可能な限り付加価値をつけてお客さんに提供したいと思ってる。

――中川さんは林業に関わるいろんな仕事を経験してきていますよね。

中川:それぞれの工程を経験してきたから見えるものがあって、ひとつの工程だけしか経験していないと気づかないことや無駄が出る。例えば、誰かに頼まれた規格だけに沿って 製材しているとそこから外れる端材が出てくる。そういった端材はすぐに燃料なんかにされてしまうんだけど、規格そのものを自分で作って買ってもらったり、コースターやキーホルダーなどの小さな木工製品を作る仲間のつながりがあればロスが最小限で済む。木が森から出て、お客さんの手に届くまでのつながりの中で、なるべく木の形で残せるようにしたい。そういう試行錯誤こそが為替レートや短期的な需給状況などの外部要因に振り回されずに、自立して食べていくうえで必要だと思ってる。

想いが形になってきた。すべての工程関われるからこそ出せる価値、伝えられることがある。

――お話を聞いていると2018年のLVSで語ったことが形になってきているのを感じます。

中川: うん。あのときは何も実績がなくて、想いだけしかないから「やってみたいです」「がんばります」くらいしか言えなかったけど、今は少し見せられるものもあるかな。もちろんまだまだ道半ばなんだけども、ここまでくる間はやることがたくさんでいつも何かに追われていて、休みもあまりなかった。だけど、やりたいことをやれているって実感はあったね。

建設中の工場の様子(2023年5月)。使われる材木は中川さんが自分で加工したもの。

――今回建てた工場についても教えてください。

中川:入れている機械は全部50年、60年前のものだけど「まだまだ100年持つよ!」なんて言われてる。大量生産する工場ではコンピューター制御の機械を入れるんだけど、そういうのはマツ類やスギのような針葉樹で同じ規格の板を作るのには向いている。だけど、特殊な寸法で作ったり小回りを利かせるのには向いていないし、特に広葉樹を扱おうとすると難しい。だけど自分のところでは対応できる。

――広葉樹は難しいんですね。

中川:広葉樹は曲がっているし、枝や節の付き方で木目の出方も変わる上に、割れたり反ったりしやすいから、一本一本の丸太の状況にあわせて鋸を入れないといけない。おまけに使う人の用途や考え方によって製材した板の求められる姿が違う。最後にどんな形で使われるものなのか?を意識して加工することで価値が変わる。どんな木がいつ入ってくるかは縁だし、用途がまだ決まっていない状況で製材することも多い。木の挽き方のセオリーはあるんだけど、その通りやっていれば良いとは限らなくて、わかりやすい正解はないところがある。お客さんの顔を想い浮かべながら「こんなふうに板を製材したらあんなふうに使ってくれるかもしれない」とイメージしてやっています。それで買い手がつくこともあれば、ずっと在庫になってしまうこともある。そして何年も棚に残っていたものが突然売れることもある。

――目の前の木と最後に手に取るお客さんの両方を見て作業する必要があるんですね。

中川:お客さんにはなるべくここまで来て木を見てもらって、自分があれこれと話をして、納得してから買ってもらう。どこでどんなふうに育ち、伐られて、そして今はこの形になり、ここにあるって話をしています。若干くどいかもしれないけど(笑)。そこを理解して買ってくれるお客さんに支えられている。 時代の流れもあるし、そういうことを求めるお客さんが増えていると思う。森からエンドユーザまでを見ているからこそ伝えられるストーリーがある。うちの商品は量産の規格品に比べると少し高いかもだけど、面白がって見に来てくれた人や購入してくれたお客さんが、口コミで次のお客さんを紹介してくれる流れができつつある。

訪れた人に木について説明する中川さん

【見出し3】

汗まみれ、木くずまみれの中で技術を身につけやりがいを見つけて欲しい

――求める協働型の人材像を教えてください。

中川: さっきも言ったように林業って分業が進んでて普通は部分にしか関われない。これだけ多くの工程に関われるのはうちならではなんじゃないかと思う。そこに魅力を感じてくれたらいいな。各工程のつながりを理解し、技術を磨き、自分の言葉で発信していって欲しい。

――全部に関われることを活かして欲しいですよね。

中川:今日は自分が良いなと思っていることを話したんだけども、決して華やかな仕事ではなくて、汗まみれ、木くずまみれになる仕事なのは理解して欲しい。冬なんてめちゃくちゃ寒いしね。自分は勤め人として林業の各工程に関わる中で、ひとつひとつ技術や経験を積んできた。やっぱり林業って技術職だからしっかり技術を身につけることは必要。いろんなことを覚える必要があるけど、自分と一緒に現場に出て作業しながら自分の体で覚えてくれればいい。

――新人や経験のない人も大丈夫ですか?

何もないよりはなんらか木に関わった経験があった方が良いんだろうけど、そこは来てくれる人を見ながらで。未経験でもしっかりやる気があればいいかな。男性でも女性でもいいし。ただ、ここにある「一か所で様々な工程に関われる環境」は当たり前じゃないと思うから、最初にここだけを見ちゃうとその価値がわからないかもしれない。そういう意味では、どこかで木の仕事を経験して「何か違う」「これじゃない」って壁にぶつかった人なんかはいいかもしれない。

あと、もちろんずっと一緒にやってくれたら嬉しいんだけど、技術職なわけだししっかり技術を磨いたら「独立したい」って気持ちを持っている人もいいと思う。自分もそう思って仕事をしてきたし。

――楽しみですね。良い出会いがあることを願っています。

そうだね。良い縁があるといいね。

工場の外観。規格の大きな板も製材できるように開口部は6メートルと広めにとられている。

「LVSへの挑戦」、協働型地域おこし協力隊制度について

厚真町の協働型地域おこし協力隊制度では、厚真町の事業者が「新規事業」(創業5年未満の事業者は新規事業とみなします)を始める際に、その事業を担当する人材の採用を支援する制度です。地域おこし協力隊制度を活用し、協働型人材の活動費として町から事業者にお金が支払われます。採用された人材は、事業者と雇用契約を結び、社員として事業に携わり、事業者から給与が支払われます。地域おこし協力隊の制度は最大で3年の制限があるため、3年が経過した後は町から事業者への支援はなくなりますが、事業者との雇用関係は継続します。

そこで3年後以降も事業継続可能性が十分にあるのか?という事業性、および、協働型人材にあたる人がその事業を推進する経験や意欲が十分にあるかどうか?という資質を確認することが必要となります。その確認の場として2023年度より協働型を目指す方はLVSへ参加していただきます。

事業性を評価されるので、LVS参加前にも事業主とコミュニケーションをとり、その事業の可能性や具体的な事業プランを把握し、事業を推進するにあたり、どのような役割を担うのかを理解し説明できるようにする。事業主から提示された情報が不十分であると感じたならしっかりと質問したり、自分の仮説をぶつけたりしながら「自分事」にしていく。そこに仕事があるからではなく、自分自身の夢や目標と、目の前の機会の重なりをしっかりと見つけることが大切です。雇われる感覚ではなく、しっかりと起業家マインドを持つ人こそが新規事業を担う人材には必要だと考えています。

LVS2018に参加した当時の中川さん、板を片手に自らの経験と林業への想いを伝える。

LVS参加前に全てできている必要はありません。LVSの場で自分自身と向き合い、さまざまな刺激を受ける中で、自分自身の覚悟や事業についてより詳しく知りたい欲求が出てくると思います。その過程で事業主とのより深いコミュニケーションが促されます。それは応募した人だけでなく事業主も試されることつながります。事業主と協働型人材、LVSを通じて互いの相乗効果が生まれる、より良いチームとなることを期待しています。

中川さんと一緒に働いてみたい人はまずは下記より基本的な情報を入力の上ご応募ください。

https://forms.gle/DveerpxfKBVRoQp78

「申込内容」の項目で
「協働型地域おこし協力隊として入りたい(応募者向け)」にチェックしてください。

エントリーにあたってはご自身のプロフィール等を記載する「エントリーシート」と事業に関する「企画書」が必要となります。事業に関しては事業主とコミュニケーションをとり、自らの責任で作成してください(もちろん一緒に作ったりアドバイスを受けても構いません)。事業主との連絡方法は事務局がご案内いたします。

この記事を読んでみて、もし「自分で起業」に興味が湧いた!という方は、中川さんも参加したLVSへのエントリーをご検討ください。

https://atsuma-note.jp/lvs/



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